4月の初めくらいから作っていた作品がやっと完成しました。
本当は5月28日くらいには完成していたのですが、ちゃんとした写真を撮るための環境を整えるのに手間取って、紹介するのが今日になってしまいました。
制作期間はおよそ2ヶ月弱です。
この作品「iPSパーツ〜頭蓋骨」について書いていきたいと思います。
「iPSパーツ〜頭蓋骨」
約5500個の抵抗をハンダ付け
「iPSパーツ〜頭蓋骨」は約5500個の抵抗をハンダ付けして立体造形した作品です。
これだけの数の抵抗を彫刻的な立体作品として仕上げるのはかなり根気が必要な作業でした。
毎日作業ができていたわけではありませんが、制作期間は約2ヶ月弱ほどかかってしまいました。
この作品を作る作業を続けていたら肩こりと腰痛がひどくなりました。
制作コンセプト
この作品は「iPSパーツ〜頭蓋骨」というタイトルの通りに、現在盛んに研究が行われている「iPS細胞」にちなんで命名したものです。
人間の身体は様々な種類の細胞で構成されています。
頭蓋骨などの骨も骨芽細胞という細胞の塊なのです。
iPS細胞とは、どんな種類の細胞にも分化して、無限にその細胞を培養し、作ることができるということで、主に医療の分野で大きな期待が寄せられています。
現在はまだまだ研究の段階で実用化には至っていませんが、最終的には現在は治療が不可能な様々な病気を治療することが可能になると言われています。
例えば、難病で機能不全になってしまった臓器の代わりにiPS細胞の技術で創りだした臓器をまるごと移植する、なんていうことができるようになるのかもしれません。
しかし、現在の技術では人間の身体は一部分であってもそう簡単に創りだすことは出来ません。
iPS細胞の技術があったとしても、現段階では立体的な形状である心臓や肝臓などの臓器を創りだすのは非常に困難であるとされています。
故に、人間の身体というものは簡単に取り替えて治すということが出来ない、かけがえの無いものです。
逆に人間の細胞とは違って、この作品を構成している抵抗(電子パーツ)は工場などでいくらでも量産することが可能です。
そして、一つ一つはんだ付けをすることによって、どんな形状のものでも創りだすことが出来ます。
培養した細胞で作るのは難しいとされる立体的な造形も、電子パーツならば人間の手で手間ひまかけさえすれば、この作品のモチーフである頭蓋骨のような形状のものでも作ることが可能です。
また、この作品で使われている抵抗などの電子パーツは「機械」の最小単位でもあります。
人間の最小単位である「細胞」と電子パーツはそう言った意味で、非常に似ている性質があると思ったのがこの作品の制作のきっかけです。
この作品で表現したかったのは、いくらでも創りだすことができて立体的な造形も可能である「電子パーツ」と、創りだしたり思ったような形状にすることが非常に難しい「細胞」との対比です。
これは、現在の医療技術と、機械部品などを作るための産業的な意味での技術を比較して、アイロニカルなイメージを鑑賞者に伝えたいという目的もあります。
その対比によって、現在、医療技術に求められているのものと現実とのギャップを表現しました。
iPS細胞の技術は将来的にはどんな臓器や身体の一部分であっても創りだすことが可能になるとは言われていますが、そのためには様々な課題があって、それをクリアしなくてはならないと言われています。
「iPS細胞」は理論上は可能であることが証明されただけで、まだまだ夢の技術であることには変わりないのが現状です。
したがって、この作品を通して僕が願うのは、一日も早いiPS細胞の実用化と技術の確立です。
この分野に興味をもったきっかけ
実はこのような分野に興味をもったのはあることがきっかけです。
今はまだ僕の中で気持ちの整理もついていない部分もあるので、この場ではまだあまり詳しく書きたくはないのですが、それは去年経験した「別れ」が原因です。
いろいろあって、再生医療という分野に救いを求めて、たくさん情報を調べたり、訪ねたりしたのですが、結局は間に合いませんでした。
でも、この経験があって今まで自分の知らないところで苦しんでいる人がたくさんいるのだということも知ることが出来ました。
僕がそうであったように、実際に苦しんでいる人やその家族からすると、iPS細胞のことや再生医療というものは唯一の救いであるように思えました。
そこで、少しでも多くの人にこの分野に興味を持ってもらって、iPS細胞をはじめとする医療技術の発達の役に立つことを願って、この作品「iPSパーツ」を作ることにしたのです。
まとめ
約5500個もの抵抗を使って作った「iPSパーツ〜頭蓋骨」は現在の医療技術と工業技術の対比を表した作品です。
工業製品である電子パーツ(抵抗)をハンダ付けして立体的な造形を行うことで、人間の身体と健康のかけがえのなさを表現しました。
この作品は頭蓋骨をモチーフに選んだのですが、今後も他のモチーフの「iPSパーツ」も制作する予定です。
「iPS細胞」は夢の様な素晴らしいものではありますが、現在はまだ実用化されていません。
しかし、いつの日か様々な病気の治療が可能になる日が来るはずです。
その日が一日も早く訪れることをこの作品を通して願っています。