切嵌象嵌の筥(はこ)「ロボックス」色金で作った彫金作品

切嵌象嵌 筥 ロボックス

今日からブログの中で、過去の作品の紹介もしていこうと思います。
第一弾は「ロボックス」というタイトルの作品です。
もう、8年くらい前の今となっては懐かしい作品です。
大学時代学んでいた彫金の切嵌象嵌(きりばめぞうがん)という技術で作った、金属で出来ている筥(はこ)です。
大きさは高さが8cm位です。

「ロボックス」

大学3年生のときの作品

僕は東京芸大の工芸科の「」という研究室に所属していました。

工芸科では、2年生になって半分くらい過ぎた頃に講座の選択があって専攻が決まります。
専攻が決まってからしばらくはその講座の技術を会得するためにしばらくは基本的な技法のお勉強をします。
僕の場合は彫金専攻なので、彫金の基礎の練習と課題をこなし続けました。
今思えば修行の日々のようでしたね。
切嵌象嵌 筥 ロボックス
「ロボックス」は彫金の基礎課題の作品の一つです。
切嵌象嵌という技法を使って「筥」を作るという課題でした。

「筥」は普通に「箱」という漢字でも良いと思うのですが、この課題の時は何故かあまり見たことの無い「筥」という漢字を使っていました。
大学の先生が授業の時にこの漢字の意味を教えてくれた気がするのですが忘れてしまいました。
伝統工芸などの作品の「はこ」は、「筥」という漢字を使うことが多いみたいですね。

「ロボックス」というタイトルを考えたのは

この作品のモチーフは「ロボット」です。
ちょっと古い感じのデザインのロボットの頭部と、メカっぽい模様を表現しました。
切嵌象嵌 筥 ロボックス
筥(はこ)なのでちゃんと蓋が取り外しできるように出来ています。

「ロボックス」というタイトルは「ロボット」と「ボックス」から思いつきました。
当時はダジャレっぽいタイトルばかり考えてしまう病気にかかっていたので、そんな変なタイトルの作品ばっかりです。

「彫金」という伝統技法を使った作品でメカメカしい作品を作ったらおもしろい気がする!というところからデザインを考えました。

切嵌象嵌とは

「ロボックス」は彫金の「切嵌象嵌」という技法で作られています。

切嵌象嵌というのはすご〜く簡単に言ってしまうと、色の違う金属の板をデザインにしたがってピッタリ切り抜いて、切り抜いたパーツをくっつけて、研ぎ出すことで、模様や絵を表現するという技術です。
ジグゾーパズルと同じ理屈ですね。

切嵌象嵌はこうして言葉にすると簡単ですが、技術と根気の必要な難しい技法です。
「筥」の課題の前に、まずは6㎝×6㎝くらいの切嵌象嵌の「板」を作るという課題があります。
ある程度、切嵌象嵌に慣れてから筥を作る課題にとりかかります。
切嵌象嵌 カメレオン
これは、その時作った練習作品です。
こんなかんじの小さい板を完成させるだけでもかなり苦労した記憶があります。
まあ、当時は彫金大好きな学生だったので全然苦ではありませんでした。

色金

切嵌象嵌で作品を作るにはまず、自分の使いたい色の分だけ材料となる板を作ることから始まります。
各金属の溶かしこむ比率によって様々な色の合金を作ることが出来ます。
切嵌象嵌で使うことができる主な金属の種類は次の通りです。

  • 純銅(銅100)赤っぽい茶色
  • 純銀(銀100)白色
  • 純金(金100)黄色
  • 並四分一(銀25:銅75)灰色
  • 三分挿し赤銅(金3:銅100)青みのある黒色

四分一(しぶいち)や赤銅(しゃくどう)という聞きなれない名前が混ざっていると思います。
この2つの金属の上記の割合は代表的なものしか書いていないですが、この配合の割合を変えることで微妙に色合いを変える事ができます。
同じ銀と銅の合金である四分一でも割合が変わると白四分一、上四分一、黒四分一というように呼び方も変わります。
四分一でグレートーンのグラデーションを作ることも可能です。

これらの金属のことを日本の伝統的な金属「色金」といいます。

当時はちょうど、貴金属の値段が上がり始めた時期で銀や金はかなり高額なので、学生だった自分にとっては買うのに勇気が必要でした。
今は、それよりもさらに倍以上の金額になっていて、金属工芸を専攻している学生にとっては苦しい時代なのではないかと思います。
色金
作品のデザインを考えて、使う合金の種類と量が決まったら、作りたい合金の比率に分けた金属をるつぼに入れて電気炉で溶かし、金型に流し込みます。
そうして作ったインゴット(金属の塊)をハンマーで叩いたりローラーを使ったりして伸ばして、厚さ1.2mm位の板を作ります。

彫金の基礎技法の集大成

色金を使って筥を作りましょう!というのが「ロボックス」を制作した時の課題内容でした。
詳しい作り方は長くなるので説明を省きますが、手順は次の通りです。

  1. 材料を作る
  2. 象嵌した板を作る
  3. 板をくっつけて筥の形にする
  4. 研ぎ、磨き
  5. 色上げ
  6. 完成!

料理のレシピみたいな書き方をするとすごく簡単そうですが、作るのが大変だったことはよく覚えています。

彫金の基礎課題の集大成のような作品と課題です。
苦労して提出期限内に何とか完成させることが出来ました。
切嵌象嵌 筥 ロボックス

まとめ

最近は作品を作るときは「彫金」の技術を使った作品を作ることはほとんどなくなってしまいました。
しかし、芸大に入学して大学院を修了するまで「彫金」を学び続けていたという経験は、現在の作品制作に影響が無いわけではありません。
僕にとって彫金の技術は原点のようなものです。
たとえ金属以外の素材を使っている作品を作ったとしても、芸大で勉強した6年間があってこそ今の自分の制作スタイルというものが生まれたのだと思います。

「ロボックス」は大学生3年生のときの課題制作の作品です。
8年ほども前の古い作品ですが、印象に残っている思い出の作品です。

ブログで昔の作品の紹介を書いていこうと思ったのは、自分自身のことを振り返るためでもあります。
芸大を卒業してから何年も経ってしまった今になって、学生時代の作品を晒すのはちょっと恥ずかしいですけどね。
それでも当時は一生懸命作った作品の一つです。

いくら精一杯頑張って作った作品でも時が経つにつれて、こんな作品も作っていたんだ!という事実と思い出は失われていくものです。
しかし、ブログに書く事によって忘れられていくはずだった「ロボックス」という作品が一つの「価値」として残り続けるのです。
だからこそ、せっかくブログを始めたのですから書けることはどんどん書いていこうと思いました。

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