先日、MHaudioさんの工房見学に行った際に持ち帰らせていただいた、真鍮製のボリュームツマミを加工してみました。
彫金の技法や技術を使って加工した9個のツマミは、他にはないちょっと変わった見た目のツマミとなりました。
今回加工した9個の中から、いくつかの製作過程を紹介していきます。
ちなみにこれらのツマミは6/28~29に秋葉原で開催されるポタフェスで展示していただけるそうです。
彫金の技術を使って真鍮製のボリュームツマミを加工
毛を彫る
まずは毛を彫ったツマミです。
先日もツマミに毛を彫ったものを紹介したのですが、今回はツマミの円柱状の形体を崩さずに表面だけの加工をしてみました。
ヤスリでどんぐりのような丸っこい形に削る必要がなかったので、こちらのほうが作業的には楽でしたね。
このツマミの表面の毛は「鏨(タガネ)」と呼ばれる小型のノミのような道具を使い、コツコツと一本一本彫って表現したものです。
本当に地道な作業です。
最後に表面を人工的に酸化させることで、黒い色の毛並みをイメージで仕上げました。
蹴り彫り
これは「蹴り彫り」という技法で波のような曲線の模様を表現したツマミです。
蹴り彫りは、くさび形の連続したような彫り跡が特徴の彫り方で、飾り金具などにもよく用いられている技法です。
専用の蹴り彫り用の鏨を用いて彫ります。
ツマミの側面は曲面なので、綺麗に彫るのはかなり苦労しました。
個人的には蹴り彫りは鏨を打つ感じが気持ち良いので、好きな彫りの種類の一つです。
魚々子
「魚々子鏨」と呼ばれる、先端がお椀状に凹んでいる鏨で表面をくまなく打ってテクスチャを表現しました。
魚の卵のように粒粒した感じの見た目から、魚々子という名前になったのだと思われます。
魚々子は江戸時代の刀の鍔などにもよく使われていた、非常に繊細な技法です。
拡大すると粒粒が散らしてあるのがよくわかると思います。
規則正しく正確に魚々子鏨を打つのは、かなりの集中力が必要な作業でした。
今回加工したツマミの中で一番難易度が高かったかもしれません。
リューターで削る
真鍮のツマミの表面がクシャクシャしたような感じ?になるような加工をしてみました。
これは、リューターと呼ばれる小型の回転工具に小さな球状の刃(ブッシュ)を取り付けて、ちびちびと表面を削って表現したものです。
リューターは歯医者さんとかでも歯科医用のリューターが使われているのを見たことがある人も多いはずです。
このやり方は、伝統的な彫金技法というわけではないですが、リューターは彫金で作品制作している人にとっては必須のアイテムの一つです。
リューターは使い方次第でいろいろ使えるので便利です。
このツマミは、真鍮の色が変化していくのを楽しんでもらいと考えて、あえて表面を何もせずに完成としました。
銅線をろう付け
真鍮のツマミに銅の丸線を巻きつけて「ろう付け」しました。
ろう付けと言うのは、通常の銅や真鍮などの金属よりも融点が低い「ろう材」をバーナーで炙って溶かしこみ、金属のパーツ同士を接着する技法です。
今回の銅線と真鍮のツマミの接着には銀ろうを使いました。
銅ろうや真鍮ろうというものもあるにはあるのですが、やはり扱いやすいのは銀の混ざっているろう材である銀ろうです。
ロウ付けをした後に、表面を細かいリューターポイントで削り、テクスチャをつけて完成です。
まとめ
今回はMHaudioさんの真鍮のボリュームツマミ9種類を加工してみました。
ツマミはポータブルヘッドホンアンプなどの見た目の印象を大きく左右する重要な要素の一つです。
今回加工したようなちょっと変わったツマミをアンプに取り付けたら、他にはない印象のアンプへと変化するはずです。
今回は彫金技法をテーマにして製作してみましたが、まだ他にもいろいろな加工方法が考えられるので、そのうち他のパターンも試してみたいですね。
まだ持っていないのですが、旋盤を買って真鍮の塊を削りだして、一から真鍮製のツマミをいつか作ってみたいとも思いました。
追記:MHaudioさんのブログでもこのツマミのことを紹介していただきました。
ポタフェスの準備中、凄いツマミと、HA-1ヘヴィーカスタム|MHaudioのブログ