iPS細胞と電子パーツをテーマにした作品シリーズとして制作している「iPSパーツ」の新しい作品が完成しました。
前回までの制作→【制作風景】「目」をモチーフにした作品を制作中
今回のモチーフは「眼球」です。
たくさんの電子パーツのハンダ付けを繰り返すことで組み立て、眼球を表現しました。
「眼球」という部位は、移植をした後に、もしも問題が発生した場合に発見しやすいということで、iPS細胞を利用した移植治療の臨床実験が最初に行われる場所であるとされています。
もちろん、現段階では「眼球」をまるごと創りだすことは出来ないので、網膜細胞をiPS細胞の分化する特性で培養して移植するというものなのだそうです。
そんなことで、「目」と言うのはiPSパーツの題材として、作るべきモチーフの一つであると感じたので制作することにしました。
「iPSパーツ〜眼球」
コンセプト
「iPSパーツ〜眼球」の制作コンセプトは、先日三越で行われた展覧会にも出品した「iPSパーツ〜頭蓋骨」と同じです。
「iPS細胞」をテーマにして、「電子パーツ」を使い、人体のパーツを造形するというのが、おおまかな制作コンセプトです。
ハンダ付けによって立体作品を作ると言うのは、実は大きな意味があります。
「人体の一部を作る」ということと「電子パーツで回路を作る」という行為を同じ方法にしたかったからです。
電子パーツが何かに使用されるときは、基本的にハンダ付けをするものですからね。
電子パーツと言うのは、工場などでいくらでも量産できるものですが、人間の身体の一部分と言うのはそうはいきません。
現在、iPS細胞という素晴らしい技術が生まれ、実用に向かって研究が進んでいますが、実用には程遠いというのが現状です。
電子パーツの生産の容易さと比べると、人体の一部分を複製すると言うのはまだ大きなハードルが存在しているというのが現状です。
「iPSパーツ」という作品シリーズで表現したかったのは、かけがえのない人体を構成する細胞と、量産の可能な電子パーツの価値の重さの違いです。
両者の要素を対比的に用いることによって、人間の健康や生命の尊さを表現しました。
眼球はiPS細胞の初の患者治療となる部位
眼球はiPS細胞の臨床実験の第1号となる部位なのだそうです。
その理由は眼球というのが人間の身体の中で、最も異変があった時に見えやすい場所だからというのが理由の一つとされています。
iPS細胞の最大の問題点は細胞がガン細胞化してしまう危険があるということです。
万が一変化があった場合、いち早く気づきやすいのが網膜の移植だということですね。
多種類の電子パーツを使用してみた
「iPSパーツ〜眼球」では、今までのiPSパーツシリーズと違っていろんな種類の電子パーツを使用しました。
そうすることによって、色の違いを楽しむことができる作品となったと思います。
瞳孔の部分は赤色の発光ダイオードを使っていますが、本当に光るというわけではありません。
球体の部分から伸びる尻尾のような部分は視神経です。
これは、抵抗部品をハンダ付けして表現しています。
この作品は前回制作した「iPSパーツ〜頭蓋骨」などのような、ずっしりした量感はありませんが、また別種の良さがありますよね。
まとめ
「iPSパーツ〜眼球」はそこまで大きさは大きくありませんが、色彩が豊かな作品に仕上がったと思います。
この作品シリーズは作業的にかなり大変になってしまうので、どうしても大きな作品を作ることは出来ません。
展示の時は、そのこじんまりした感じが逆に良いとも言えるのですが、上手く展示しないと見栄えがしないので展示のやり方には工夫が必要だと思います。
今は作品数が少ないですが、もう少し頑張っていくつかの作品を作って、並べて展示したらけっこう良いのでは?と思ったりしています。
次にどの部位を作るかはまだ未定ですが、しばらくはこの「iPSパーツ」シリーズを継続して作って行きたいと思っています。