「えびる」は3年ほど前に制作した作品シリーズです。
全部で16体ほど作りました。
樹脂粘土という素材に初挑戦した作品でもあります。
樹脂粘土は今まで主に使っていた金属などの素材よりも自由に着色できるので、非常に表現の幅が広がる良い素材です。
「えびる」
よこしまなこころ?
「えびる」は「邪悪な」を意味する英単語の「evil」から考えたタイトルです。
「えびる」は「もしかしたら悪いことを考えているかもしれないけど、人間にとっては無害な生き物」をコンセプトに制作した作品です。
「えびる」は真っ黒い悪魔のような角を生やしておきながらも手足は短く、身体能力は低く人間に対しては無害な生き物です。
悪いことを考えているように見えても、実はいいやつなのかもしれません。
でも突然こんな生き物が部屋に現れたら怖いという恐怖心は感じるはずです。
この作品では、実際は無害な生き物であるということと、見た目と内面が一致するかどうかはわからないということを表現しました。
樹脂粘土
「えびる」は「樹脂粘土」をメインの素材として使った作品です。
ちなみに角の部分は金属、目はアクリルでできています。
樹脂粘土は扱い方に癖がある素材ですが、慣れると様々な表現が可能な素材です。
基本的にはアクリル絵の具などを混ぜたものを使って作品を作っていきます。
自由に着色して工夫次第でいろんな質感を表現できる樹脂粘土という素材は、この作品を作ってからというもの、お気に入りの素材となりました。
多くの可能性を秘めた、非常に楽しい素材です。
アクリルを整形
また、目のパーツも工夫して作りました。
透明なアクリル板を丸く切り抜き、熱をかけておわん形に変形させます。
そして、おわん形に成形した目の裏側から塗料で目の色と模様を描きます。
そうやって目のパーツを制作して、埋め込みました。
大学で習った彫金の技法を使って制作をしていた頃と違って、自分で技法を考えて表現していかなくてはならないのは大変ですが、それが上手く言った時はとても嬉しいです。
自分で考えた技法を使うことはオリジナリティのある作品を作ることにもつながってくるはずです。
まとめ
「えびる」は見た目と内面は必ずしも一致しないということをテーマに制作した作品です。
邪悪にも見えてしまう黒い角を持ち、何を考えているかわからない表情をしている「えびる」は、鑑賞者に複雑な心境の変化を与えることを目的にデザインしました。
また「えびる」は樹脂粘土という素材を本格的に使って制作した最初の作品です。
この作品シリーズを何個か作り続ける中で、自分の中でも樹脂粘土の扱い方が確立されてきたように感じます。
非常に扱いの難しい素材ではありますが、慣れると様々な質感と色を表現することができるのでお気に入りの素材の一つです。
僕達アーティストは大学を出た後は全てを自分で考えて制作活動をしていかなくてはなりません。
こうして、自分で作り方を考えて制作するという経験ができたということは非常に勉強になるし、反省することも多い作品となりました。
今後も工夫しながら様々な素材と向き合って制作活動を続けていきたいと思います。