先日、MHaudioさんの工房見学に行った際にボリュームツマミを持ち帰らせて頂いて、加工しました。
そして、またそれとは別で、後日MHaudioさんのポータブルヘッドホンアンプである「HA-1」の部品を送っていただきました。
MHaudioさんの工房を見学してきた
【MHaudio】真鍮製のボリュームツマミを加工してみた(×9個)
自宅に届いたパーツを眺めながら、どのように加工するかすごく悩みました。
なぜなら、ツマミでいろいろ試したようにいろいろな加工法が考えられるからです。
MHaudioさんのポータブルヘッドホンアンプ「HA-1」の部品を加工して毛だらけにしてみた
いくつかのパターンを考えてみたのですが、自分の持ち味を最大限活かせるだろうと考えて、HA-1のパーツに毛を彫ってみることに決めました。
ツマミとかならともかく、これだけの広い面積に細かく毛を彫るのは、かなり大変な作業でしたが、先日無事に加工を終えて、MHaudioさんに送る事が出来ました。
完成品はMHaudioさんのブログで紹介してくださいました。
ポタフェスの準備中、凄いツマミと、HA-1ヘヴィーカスタム|MHaudioのブログ
HA-1 スーパーカスタム「tsumuji」をポタフェスに展示します|MHaudioのブログ
※追記
このHA-1はスーパーカスタム「tsumuji」(つむじ)という名前に決定しました。
ちなみにこの毛だらけのHA-1はeイヤホンさん主催のイベントであるポタフェスにて展示していただけるそうです。
ポタフェスは6月28日〜29日にベルサール秋葉原にて開催されます。
HA-1の加工工程
未加工の状態の部品です。
どのように「毛を彫る」という加工をしていったのか、その工程を書いていきます。
フロントパネルに文字を彫る
まず最初に鏨を使いフロントパネルに文字を彫っていきます。
この鏨は「毛彫り」と言って、彫金の彫り鏨の中で最もスタンダードな鏨です。
この毛彫り鏨で大きく彫っておき、その後「MHaudio」「HA-1」などの文字は毛の流れの一部に見えるようなイメージに仕上げます。
完成品は文字は写真では見えにくいですが、自然に毛の中に存在しているような感じで、肉眼でよく見てみると見えると思います。
全体の形を整える
フロントパネルとリアパネルを適当なネジで仮止めして、紙やすりで全体の形を整えます。
このHA-1はプラスチックのフランジを取り付けないで、仕上げる予定なので、パネルとボディがしっかりとかみ合っている必要があるのです。
定盤(定盤)に紙やすりを固定して、全体が平らになるように丁寧に削りました。
これで、毛を彫る前の準備は完了です。
次はいよいよ毛を彫っていく作業です。
毛を彫る
毛を彫る前に油性マジックで毛の流れのイメージを書いておきます。
たぶん、実際に作業をする僕以外にはよくわからない謎の文様みたいに見えると思うのですが、最初に下書きのようにイメージを表す線を書いておくのはすごく大事です。
この黒い線は、最後にはシンナーを使って消してしまいますが、このようにある程度の目安となる線を書いておかないとどうしても単調な毛の流れになってしまいがちです。
油性マジックで全体に毛のイメージを書いたら、最初にフロントパネルとリアパネルに毛を彫っていきます。
この「毛」も自作した専用の鏨を使って、一本一本コツコツと地道に彫っていきます。
フロントパネルは先に毛彫り鏨で深く彫ってあった文字などの部分を基準にして、毛の流れを表現していきます。
リアパネルは”つむじ”のようなイメージで彫りました。
中心に向かって毛が集まっているような感じです。
お尻の部分なので、目立たない場所ではあるのですが、毛の流れが一番わかり易いパーツとなりました。
毛を彫ってから、最後にリアパネルに僕の「T・Miki」という刻印を打ちました。
ボディ部分に毛を彫る
ここまで来たら、次はいよいよボディの部分に毛を彫っていきます。
前後のパネルをネジで仮止めした状態で彫っていきます。
フロントパネルとリアパネルの毛の流れのつながり感も意識したいからです。
予想通りなのですが、これだけの面積を彫るのは、かなりの時間がかかりました。
そして、面積が広いとどうしても単調な印象になりがちなのも問題の一つです。
なので、そうならないようにひと通り彫ったら終わりではなく、同じ面を何度も繰り返して納得行くまで毛を彫りました。
上面と背面ができてきましたね。
光のあたり方でかなり印象が変わるので、写真撮影がすごく難しいです。
側面もしっかりと彫っていきます。
側面は溝があるので、その溝を基準にして毛の流れを作っていきます。
全部に毛を彫り、全体を何度も見なおして調整しました。
これで本体のパーツは完成です。
ツマミとネジ
本体は完成したので、後はツマミとフロントパネルに取り付けるネジの加工です。
ツマミには、本体と同じように毛を彫ります。
最後に表面を酸化させて黒っぽい色に変化させて完成です。
次はフロントパネルに取り付けるネジの加工です。
ネジにも毛を彫るか最後まで迷ったのですが、ネジまで毛だらけだとちょっとうるさくなってしまうかもしれないと思ったのでやめました。
本体の雰囲気に合うようにエッジを滑らかに削り、全体の雰囲気に馴染むように表面につや消しのヘアラインぽい処理をしました。
完成
とりあえずこれで部品の加工は完了です。
後は、MHaudioさんに送って中身を入れてもらえば完成です。
試しにツマミを乗っけて雰囲気を見てみましたが、全体のバランスは悪くない感じです。
完成版はMHaudioさんがブログに載せてくれましたので、そちらを見ていただければと思います。
ポタフェスの準備中、凄いツマミと、HA-1ヘヴィーカスタム|MHaudioのブログ
HA-1 スーパーカスタム「tsumuji」をポタフェスに展示します|MHaudioのブログ
実物は明日、秋葉原で行われるポタフェスの会場で見ることができます。
ポタフェスには今まで行ったことがないのですが、せっかくなので明日東京に行ってポタフェスに顔を出そうと思っています。
まとめ
ちょっとマニアックな雰囲気のHA-1が完成してしまいましたが、世の中に2つとないポータブルヘッドホンアンプであることは間違いないと思います。
僕自身も、MHaudioさんのポタアンであるHA-1は所有していて、愛用している一人です。
自分のお気に入りのポタアンの製作に携わることができて非常に嬉しく思います。
この、「毛」の表現は僕が芸大の彫金で学生をしていた頃の作品制作でよく使っていた手法なのですが、これだけの大きさの物に毛を彫ったのは本当に久しぶりです。
ただ、写真だといろんな反射が起こってしまい、実物の印象を上手く伝えきれないのが非常に残念です。
すごく写真を撮るのがすごく難しいですね。
まだ、僕自身も完成品は写真でしか見ていないので、明日ポタフェスの会場でこの毛だらけHA-1を見るのが楽しみです。