約2年前に制作した「#FFFFFF」というタイトルの作品について書いていきます。
この作品は白い空間で展示をすることを意識してデザインを考えた作品です。
白い空間に浮かび上がるように存在する3体の謎の生物がテーマとなっています。
作品を展示する空間に寄って印象が大きく変わるということが分かり、自分の中では非常に勉強になった作品の一つです。
「#FFFFFF」
白い空間に存在する何か
その「空間」の印象というのは人によって、大きくそのイメージが異なるものだと思います。
僕は、真っ白いだけの空間や、真っ暗な空間では特にその場所に見えないけれど「何か」が存在しているような気分になることがあります。
一種の錯視のようなものと考えられるのですが、作品を展示するギャラリースペースの真っ白い壁や、美術館のただっぴろい空間を目の前にすると、実際には何もそこに存在しないが故に、何かがそこにいるような気がしてきてしまうのです。
「#FFFFFF」は白い展示空間に存在するであろう何かを、想像して、具現化した作品です。
「#FFFFFF」は白という意味
「#FFFFFF」というのはウェブカラーで白を表すコードのことです。
当時、自分の作品を紹介するホームページを頑張って作っていた時期でもあったので、「白」を表す言葉で何か良い物がないかと考えた結果、生まれたタイトルが「#FFFFFF」です。
ウェブカラーなどという一般の人がよく知らないようなものをタイトルにしたのには、理由があって、その一つはこの作品のテーマ性に「デジタル的な世界観」のような側面を持たせたかったからです。
というのも、真っ白い空間というのは、作品を展示するには非常に見やすくて良い空間なのですが、このような空間というのは自然界の中では存在しない空間であるはずです。
自然界の空間というのは、何かとノイズ的なものが含まれていて、単一なものではありません。
そういう意味で、単一な真っ白い空間というのは、人工的な存在であると言うことが出来ます。
非常にデジタル的なイメージが強いものだと考えています。
なので、ウェブカラーの白を意味する「#FFFFFF」というものをタイトルとして考えた、ということなのです。
何もないからこそ想像力が働く
何もない真っ白い空間というのは作品を置くと、他に何も要素がないので、鑑賞者にとって作品が非常に見やすい状況です。
だから、多くのギャラリーや美術館が「白」を基調としていたり、もしくは真っ白な展示空間を演出しているというわけです。
しかし、本当にそこに(視覚的に)何もない状況と言うのは、自然界では通常有り得ないことです。
それは、動物である人間にとっては不自然な状況ですよね。
だから、真っ白い何もない空間を目の前にした時に、何かの存在を感じてしまうのかもしれませんね。
まとめ
「#FFFFFF」は今までの制作の流れからすると、新しい試みとして制作した作品の一つです。
今までは作品に、どうやって着色するかということばかりを悩んできましたが、この作品は全く逆です。
あえて色をつけないことで、どのような視覚的効果があるのかということを実験したかったというのも、制作の意図の一つではあります。
この作品を展示させてもらったギャラリーは真っ白い空間が特徴のギャラリーだったので、なかなかおもしろい視覚的な効果が得られて、興味深い展示風景でした。
結果的には今まで制作した作品の中では、新しいものが出来たのではないかと思っています。