6月2日発売の週刊少年ジャンプ27号よりハンターハンターが連載再開されるそうです。
ハンターハンターは言わずと知れた冨樫義博先生による超人気漫画作品ですが、休載の多さでも知られています。
連載再開はハンターハンターのファンとしては非常に喜ばしいことです。
個人的にはハンターハンターの休載の多さは漫画のクオリティを維持するためなら、問題無いと思いますし、我慢できます。
何よりハンターハンターがハンターハンターであるためには必要なことだと思います。
「HUNTER×HUNTER(ハンターハンター)」が連載再開!!でも休載も必要だと思う
連載再開
今週発売された週刊少年ジャンプ22・23合併号の最後の方のページに待ちに待ったハンターハンターの連載再開の情報が載っていました!
「6月2日発売週刊少年ジャンプ27号より連載再開!!」
この見開き2ページ分のために今週のジャンプを買ってきちゃうくらいうれしいです。
僕は普段ジャンプは買わないのですがハンターハンターが連載をしている時だけは別です。
ハンターハンターを読みたい、ただそれだけのためにいつもは読まないジャンプをコンビニで立ち読みしたり買ったりします。
僕はハンターハンターと冨樫義博先生の漫画の大ファンでして、学生時代には実家で読む用と自分の家で読む用に計2冊づつコミックスを購入していた時期もありました。
来月の連載再開が本当に楽しみです。
休載の多さとその理由
ハンターハンターはその休載の多さでも有名な作品です。
週刊少年ジャンプの連載なのに打ち切りにもならず、休載しつつの連載が許されているのは極めて異例なことです。
休載の理由は一言で言うと「謎」です。
休載が多くなった初期は「病気療養のため」とはっきり書かれていたこともあったのですが、実際のところははっきりしません。
中でも世間でよく言われているのが「ゲームをしているから」というものです。
冨樫先生は無類のゲーム好きとしても知られています。
言うまでもなく漫画家という職業は非常に忙しいです。
真面目に週刊連載をしていたら、おそらくゲームをしている時間はほとんどないはずです。
大好きなゲームをする時間を捻出するために休載をしているという説です。
それと、もう一つ理由として有力だと言われているのが精神的な病気であるからという話です。
その証拠かどうかわかりませんが、冨樫先生の漫画の随所に精神的に病んでいると思われるような絵が書かれている事があります。
幽遊白書の最終巻や、レベルEの心の中に閉じ込められる話などがその例として挙げることができます。
また、ハンターハンターも巻数を重ねるごとに残酷な描写が増えていきました。
幽遊白書を連載している最後くらいになって精神的に追い詰められた結果、幽遊白書が人気絶頂であった時期にも関わらず半ば強引に連載を終了させたという話もあります。
一週間に一話分の漫画を描き続けるというのは、漫画家ではない僕達には想像の出来ないプレッシャーのかかる仕事であるはずです。
常にそんな重圧にさらされたら常人では耐えられずおかしくもなるというものです。
何が原因であるにせよ、個人的にはハンターハンターの休載の多さはファンとして次の話が読めないので、じれったいという気持ちもありますが、実は必要なことなのではないかと思っています。
それはハンターハンターがハンターハンターであるためには必要なことなのです。
休載が必要な理由1:ゲーム的な世界観の維持
その理由としてあげられるのが冨樫先生の創りだしたハンターハンターの世界観とシステムが「ゲーム的」であるということです。
これは、冨樫先生のゲームに対する愛がなければ作り出すことが出来ない独特な世界観です。
もちろん冨樫先生が休載期間中に一生懸命ゲームをしているかは謎ですが、ここでは休載中はゲームをしていることを前提に話を進めます。
グリードアイランド編
ハンターハンターの物語の中で「ゲーム」ということで思い出されるのは、単行本13巻から18巻までのグリードアイランド編です。
主人公であるゴン達がグリードアイランドというゲームの世界の中を冒険する話です。
まさにオンラインゲームであるドラクエ10やFF11やFF14にハマっていた(いる?)と言われている冨樫先生ならではのストーリーです。
また、物語の中で説明されるグリードアイランドというゲームのシステムやルールも非常によく出来ています。詳しいルールの説明はここでは省きますが、特にすごいと思うのは「ゲーム性」と「ストーリー性」が相互に関係しあって成り立っている点です。
ゲームの中を冒険するというストーリーと、ゲームのルールに基づくストーリーの組み立ての完成度の高さはすばらしいものです。
まるで最後まで綿密に計算され尽くしたかのような流れで、イベントが起こったりそれを解決したりする形でストーリーが進行します。
グリードアイランド編はスクウェアのゲームである、ロマンシングサガシリーズのフリーシナリオシステムに似ている点があることを感じます。
まあ、たぶんFF11などのMMORPGのほうが共通点が多いと思うのですが、僕はオンラインゲームをプレイしたことがないのでその点については言及を控えさせていただきます。
物語の中で、グリードアイランドをプレイするプレイヤーは「ある目的」のためにグリードアイランドをプレイします。
最終的な目的を遂げるためならば、プレイする順番は普通のロールプレイングゲームと違ってどの順番からでも構わないという設定です。
自分のレベル(実力)によって簡単なイベントからこなせば良いのです。
また、条件を満たさないと発生しないイベントもあるということがハンターハンターでは描写されています。
ロマサガシリーズもまた条件を満たさないと発生しないイベントがあるという点と自由度が高いという点が共通しています。
ロマサガシリーズとグリードアイランドの最大の共通点はシステム重視のゲームであるという点です。
おおもとのゲームシステムがあって、プレイヤーがそのゲームのルールに従いつつ、ルールの中で自由に冒険をしてストーリーを創りだすという点がよく似ています。
そういえば、レベルEにも主人公たちがゲームの世界に入って冒険をするという話がありました。
この話も非常に良く寝られたゲームシステムの上に物語が成り立っています。
ハンターハンターのグリードアイランド編はゲームシステムに基づいたストーリー展開という、まさにゲームを愛する人にしか描くことが出来ない物語です。
念能力の発動条件
「念能力」のシステムもゲーム的な要素を大量に含んだものです。
念能力を使うことができる念能力者が、能力を発動するためには、その能力に付随した「条件」を満たす必要があります。
「制約と誓約」と物語中では語られているシーンが有りますが、基本的には能力発動の条件が難しければ難しいほど強力な能力が発動する場合が多いです。
中には、発動さえすれば実力差に関係なく勝敗が決まってしまうようなすごい能力もあります。
ハンターハンターの世界では単純な実力差が、勝敗を分ける決定的な要素にはなりません。
念能力のシステムはハンターハンターのストーリーにおいては最も根幹的な部分の一つです。
この念能力のシステムは前述したようにゲーム的な要素を多く含んでいます。
というのも、念能力はゲームにおける必殺技や魔法のシステムに非常によく似ているからです。
ハンターハンターの世界の念能力と、ゲームにおける魔法や技を発動するためには基本的には以下の要素が必要です。
この図のように念能力はゲームの魔法や技のシステムと共通した考えで生み出されたものであることが分かります。
オーラはMP(マジックパワー)、修行はレベル、制約と誓約はジョブや装備品などに当てはめることが出来ます。
このように考えると、念能力は非常にゲーム的な雰囲気のシステムですよね。
現実世界では、条件を満たせばすごい力を出せると言うのものは少ないです。
逆になる場合も多いのが現実です。
例えば、作業量の多い仕事をこなせば給料がたくさんもらえるわけではないですよね。
難しい条件をこなせばそれに見合った対価を得ることができると言うのは非常にデジタルな、ゲーム的な考え方です。
したがって、念能力のシステムの発想の元となったのはゲームをプレイした経験から得たものであると言えるのです。
念の系統
また念能力の系統に関しても同じようなことが言えます。
これは、ゲームの世界における属性の概念によく似ています。
念は6つの系統に分類されます。
ハンターハンターの世界における能力者はこれら6つの念系統のうちどれか一つに分類されます。
また、隣り合っている能力系統は習得しやすいという設定です。
ハンターハンターの世界の念能力者たちはこの6系統を元に修行をして自分に合った念能力を使えるようになるのです。
念能力の六性図を見てわかるように、念能力の6つの系統の設定はゲームにおける属性の概念にそっくりです。
ただ、ゲームによくある属性のように、普通に火とか水とか雷などのよくある感じにしないのが冨樫先生のセンスが光る部分です。
自分は念能力のどの系統なんだろうとか真剣に考えたりした経験がある人も多いはずです。
このように念能力のシステムとゲームにおける技や魔法、属性は非常に似通った性質があると言えます。
このことから導き出される結論
以上のことから導き出される結論はただひとつです。
「冨樫先生にはゲームをする時間が必要」ということです。
ゲームが本当に好きでたくさんプレイしている人でないと、ハンターハンターの世界観を作り出すことは出来ません。
ゲームプレイもハンターハンターを書くための取材のうちです。
しかし、ゲームを満足にプレイするにはそれだけの時間が必要です。
特に最近のゲームはよく出来ていてやりこみ要素が満載な場合が多く、普通にクリアするだけでも100時間くらいの時間を必要とする場合も少なくありません。
そのための時間を捻出するためには真面目に週刊連載を続けていてはなかなか難しいのではないでしょうか。
長い間、休載が続くとハンターハンターの続きが読めないのは悲しいですが、ハンターハンターがハンターハンターであるためには必要なことなのです。
休載が必要な理由2:完成度の高さの維持
ハンターハンターは非常に完成度が高い漫画です。
何回読んでも飽きない魅力にあふれています。
その魅力を維持するためと考えるならば、長い休載も我慢できます。
内容が濃い
ジャンプで他に連載されている漫画と比べると、ハンターハンターは1話分の内容が濃く、そして非常によく練られています。
ハンターハンター以外の漫画が面白くないというわけではないのですが、冨樫先生の発想力の人の斜め上を行く、読んだ時の毎回の驚きは他のどの漫画にもありません。
ハンターハンターの魅力は読者の予想をいい意味で裏切ってくれることです。
予想とは全く違ったストーリー展開は、次を絶対に読みたいという気持ちにさせてくれます。
この、内容の濃さと読者を欺く意外性は長い休載があるからこそなのかもしれません。
十中八九、冨樫先生は休載期間中もハンターハンターのストーリーを考え続けているはずです。
そうでないと、このような緻密に計算され尽くしたストーリーを描くことは出来ないでしょう。
キメラ=アント編
この緻密に練られたストーリー展開を見せることで特に注目していたのが、単行本18巻から30巻にも渡って描かれたキメラ=アント編です。
特にその練られた感じを感じるのはキメラ=アント編後半の「宮殿への突入」や「王」との対決のシーンです。
この頃の話は「秒単位での死闘」として描写されています。
キメラ=アント編が連載されていた時は、一話につき一秒ほどしか時間が進まない週もあり、非常にやきもきしたものでした。
しかし、その分、壮絶な緊迫感を巧みに表現することに成功していたように思います。
そのたった一秒の中につまった情報量の多さゆえに、毎週大興奮で読んでいました。
そして、このキメラ=アント編の連載中は休載が特に多かった期間でもあります。
これは裏返せば、ストーリー展開を練るためにそれだけの時間が必要だったというふうにとることが出来ます。
キメラ=アント編は様々な要素が、非常に複雑に絡み合う難解なストーリーでした。
その複雑なストーリーも、休載期間を間に挟むことで完結にたどり着くことができたのです。
休載が多いことで批判を受けることが多い冨樫先生ですが、キメラ=アント編をまとめることが出来たのは並々ならぬ精神力の賜物なのではないかと思います。
複雑でまとめ上げるのが難しいストーリーであっても、一話分の内容が薄くならないで充実した連載を続けるためには、推敲を重ねる時間が必要だったということです。
本当の意味で絵が上手い
ハンターハンターは下書き状態でジャンプに掲載されてしまったことがあります。
それも一度や二度ではありません。
しかし、それは大した問題ではありません。
なぜなら下書き状態で読んでもすごくおもしろいからです。
それは内容がおもしろいのもあるのですが、冨樫先生の「絵」の上手さも関係してきます。
他に絵がきれいで丁寧な漫画家はたくさんいますが、冨樫先生の絵は「上手い」のです。
非常に表現が難しいのですが、冨樫先生の絵は一見乱雑に見える線の一本一本によって、感情までもが表現されているように感じられます。
僕は学生時代は美術系の大学に通っていたからよく分かるのですが、「丁寧に絵を描く」という技術は誰でも練習すればできるようになるものです。
しかし冨樫先生の絵のように適当な線を描いているように見えて、「良い絵」を描くことができるようになる人は少ないのです。
「絵」だけでメッセージ性が伝わってくるような絵を描くことで、少ない文字の情報量と雑な絵だとしても、読者は書かれている以上の多くの情報を得ることができるのです。
だからネームの状態での掲載でも、全く問題ないくらいに内容が伝わってくるし、おもしろいのです。
冨樫先生の絵の上手さもハンターハンターの魅力の一つです。
じっくりストーリーを練ってください
以上のことからハンターハンターの魅力を存分に発揮し続けるためには、じっくりとストーリーを練っていただくことが非常に大事なのだということがわかります。
ストーリーを考えるのに時間を取り過ぎて、多少絵が雑になっても問題ありません。
なぜなら冨樫先生は絵が本当に上手いからです。
絵が上手いからネームだけでも十分に魅力を感じるのです。
ハンターハンターはストーリーの面白さと絵の上手さが両方合わさることで、魅力ある作品として仕上がっているのです。
まとめ
ハンターハンターは休載が多いことで有名な超人気漫画ですが、休載はハンターハンターのクオリティを維持するためには必要不可欠なのだと思います。
これだけの休載率でありながら、読者が離れずに「連載を再開する」という話が出るだけでニュースになったり、一種の「祭り」のような状態になるのがその証拠です。
いちファンとして、長く休載が続くのは続きが読めないことと、冨樫先生の体調のことなどを考えるとつらい気持ちになりますが、しかたのないことなのだと思います。
なぜなら、ハンターハンターがハンターハンターらしくあり続けるためには長い時間をかけて制作をする必要があるからです。
というふうに推測でいろいろ考えることが出来ても、ハンターハンターの休載が多い真の理由は僕達読者は知るすべはありません。
ネット上で「冨樫仕事しろ!」とか一部の心ない人々に言われているように、冨樫先生がゲームを楽しむためだけに休載しているのか、または病気療養のためなのかはっきりしたことは誰も知らないのです。
僕達、冨樫先生とハンターハンターのファンは冨樫先生がご自分の納得の行くように描くことができるようにただ待つこと、それが最も重要な仕事なのだと思います。
何にせよ、6月2日の連載再開すごく楽しみですね!