約2年前に制作した、USBメモリー内部に埋め込んだ「H-virus」というタイトルの作品について書いていきたいと思います。
この作品の中央の先端部分にUSBメモリーが仕込まれています。
この部分にPCをつなげればデータの出し入れが可能です。
「H-virus」の作品イメージは、日々進化して大容量化していくUSBメモリーなどの記憶媒体を表現したものです。
この記憶媒体の容量はもちろんのこと、その中に入れるデータの大きさや量もすごい勢いで増殖しています。
最近は世の中が、データという本来ならば目にみえないもので支配されているかのように感じることもあるくらいです。
そして、その進化のスピードはまるでウイルスが爆発的に増えていく様子にも似ています。
「H-virus」とはUSBメモリーやインターネット上に存在するデータが増殖するイメージを具現化した作品です。
「H-virus」
ネットサーフィンとデータ収集
多分、だれしもがそうだと思うのですが、暇つぶしのためにやるネットサーフィンと言うのは、自分の欲望を満たすための探索の旅だったりすると思います。
そんなときは(特に男性は)ものすごい量のデータを収集して保存したりしてしまうはずです。
この時の勢いはすごいですよね。
そんなに集めてどうするのかというくらいに大量に集めた(主に画像)データは自分のPCの中やUSBメモリーなどに保存しておくはずです。
最近は、HDDなどの容量も著しく大きくなってきていて、3.5インチの4TBのHDDとかも普通に売っています。
USBメモリーなどのフラッシュメモリーもそれと同じで、以前とくらべて見ると考えられないほどの大容量が低価格で売られるようになりました。
たまに、物置とかをあさっていると64MBのSDカードとかが出てきてびっくりすることがありますが、当時は「64MBなんていう大容量、何に使うんだ?」なんてことを思ったりしていました。
しかし、今の時代は下手をすると画像データ一つだけでも50MBくらいの大きさがあったりします。
ほんの10年くらいの間に、このような記憶媒体の容量というのは比べ物にならないくらいにまで、大きくなったと言うことが出来ます。
収集したデータを保存しておくことも、大容量の外付けHDDなどを買ってくれば済むので、難しい問題ではなくなってきました。
増殖
技術の発達というのは、歓迎すべき事だとは思います。
なぜなら、技術の発達は僕達が豊かで文化的な生活をするための要素の一つであるからです。
しかし、このインターネット上やHDDやフラッシュメモリーに保存されるデータの量というのは、その成長のスピードを想像してみると、ちょっとした恐怖のようなものも感じます。
まるで、ウイルスが増殖するかのように爆発的に増えていくデータの量は、人間の欲望が投影されている結果なのかもしれません。
というのも、デジタルな技術の発達と言うのは、人間の欲望が大きく関与しているからです。
その欲望とは、知らないことを知りたいという欲求や、ネットショッピングをして物欲を満たしたり、(特に男性は)性欲を満たしたりなどです。
これらの欲望の達成のためには、技術の発達が必要不可欠でした。
欲望という原動力があったからこそ、ここまでの技術の発達が短期間で達成されたということが考えられるのです。
そして、そのスピードは恐るべきものです。
たった10年足らずで世の中がまるっきり変わってしまうくらいの変化のスピードです。
はたして、このウイルスのような爆発的な時代の変化のスピードが良いことなのか悪いことなのかはわかりません。
これから、長い時間をかけて判断していくしかないことなのでしょう。
まとめ
「H-virus」はフラッシュメモリーの大容量化を始めとする、デジタルな分野の技術の発達をイメージして制作した作品です。
そのイメージはウイルスが人間の体内で爆発的に増殖する様子にもよく似ていると思います。
そして、その爆発的は増殖は、まるで人間の欲望が際限なく増えていく様子にも重なって見えてきます。
一瞬でデータを破壊し尽くしてしまうコンピューターウイルスのように増殖する人間の欲望は、得体のしれない怪物のようでもあるように感じられます。
「H-virus」はそんな、人間の欲望と技術の発達の様子を、ウイルスのイメージの造形で表現した作品です。
大容量化する記憶媒体は人間の煩悩そのものと言えるのかもしれませんね。