僕が芸大の彫金研究室に所属していた、大学院1年生の頃に制作した「Sandy」という作品について書いていきたいと思います。
ブリキ缶に入れた砂に自由に挿すことによって、遊んだり、印象を変えることが出来る作品です。
展示会で展示した時はこの作品のおかげで、お客さんとのコミュニケーションのきっかけを作ることが出来ました。
「Sandy」
真鍮を削りだして制作した
この作品は直径1㎝くらいの真鍮の丸棒を旋盤で削りだして、ピカピカに磨いて制作しました。
出来上がった「Sandy」達をブリキ缶に入れた砂に挿して完成です。
タイトルの「Sandy」とは、砂に挿して完成する生き物の作品だからということで名づけたタイトルなので、そんなに深い意味はありません。
展示でコミュニケーションのきっかけを作る
この砂に挿すという行為は個展でこの作品を展示したときに、観に来てくれたお客さんにもやってもらいました。
「この作品はこうして砂に挿して遊ぶことができるんですよ」
というふうにお客さんに話しかけるのです。
作品をいじりながら説明してあげると、大抵のお客さんは「へ~すごーい!」とか「これおもしろいねえ!」と反応してくれます。
この作品をきっかけにして、お客さんと打ち解けて他の作品のことも説明しやすい空気を作り出すことができました。
中には30分位この作品をいじって遊んでいる人もいました。
この作品は作品自体の価値よりも、アート作家である僕達と観に来てくれたお客さんとのコミュニケーションツールとして役に立ちました。
そういう意味で非常に勉強になった作品でした。
個展をするときは、このようなお客さんに興味を持ってもらって話しかけるきっかけになるような、作品を一つ用意しておくと良いのではないでしょうか。
お客さんも作家もシャイなもの
今まで何度も作品をギャラリーなどの展覧会で展示してきて思ったのは、展示している僕達アーティストはもちろんのこと、お客さんも僕達と会話をしたいと思っている人が多いということです。
もちろん、一人でじっくりゆっくり作品を見たいという寡黙な人もいますが、展示を見に来てくれている人はその展示に興味があってきてくれている人がほとんどですから、展示されている作品を作った作家とは話をしたいと思ってくれている場合が多いはずです。
しかし、初対面の人同士というのは誰しもが会話しづらいものです。
なにかきっかけが無いと話すことは出来ないです。
そんなときに「Sandy」のような、見に来てくれる人も遊ぶことができるような仕掛けのある作品を展示してあると非常に心強いです。
この作品のおかげなのか、この作品を展示した個展では大抵のお客さんは好意的に会話をしてくれました。
まとめ
「Sandy」は展覧会を観に来てくれたお客さんとのコミュニケーションツールになりうるのだということを初めて実感させてくれた作品となりました。
当時、学生だった僕にとってこれは大きな発見でした。
この作品を通して、展示を観に来てくれた人に直接感想を聞くことができたのはとても勉強になりました。
中には自分が思いもしなかったことをアドバイスしてくれる人もいて、良い経験が出来たと思います。
ギャラリーなどで行う展覧会はお客さんとアーティストとの距離が近いのが魅力ですよね。
会話をするきっかけとなる作品があると、その距離がさらに近くなったように感じました。
アートと言うのは人と人とのコミュニケーションが目的であるという側面があります。
展示会というのは作家が他人と作品について交流を持つことができる数少ない場所です。
その貴重な機会を大事にしていきたいものですね。