大学院生時代に制作した「一人で立てるもん!」は彫金の技術を使い、表面の毛のようなテクスチャーを表現した作品です。
本来は自立することの出来ない「どんぐり」をモチーフに、どんぐりでも気合があれば立ち上がることができるということをテーマに制作しました。
「一人で立てるもん!」
どんぐりの気合いを表現
どんぐりは本来であれば形状的に自立することは出来ません。
しかし、そのどんぐりが生命を得て、何とか自分の力で自立しようとする、というのがこの作品のテーマです。
「ひとりで立てるもん!」にはどんな人でも挫けそうになっても諦めなければなんとかはずだよ!というメッセージが込めて制作しました。
どんぐりに近い、不安定な形でありながらもバランスをとって、自立できるように設計しました。
この作品は全て銅や真鍮などの金属でできているのですが、空洞になっている内部の下部分に重りを仕込むことで、しっかりと自立する事ができます。
毛
この作品の表面の毛のようなテクスチャーはタガネを使って一本一本コツコツと彫って表現しました。
非常に細かい、根気の必要な作業でした。
その分、全部毛を彫り終わった時の達成感もすごかったのを今でも覚えています。
持つと内部に重りが入っているせいでずっしりと重く感じます。
手のひらに収まるようなサイズの作品ですが、そのぶん密度感を高めることによって、作品を充実させることに努めました。
まとめ
この作品もずいぶん懐かしい作品です。
「ひとりで立てるもん!」というタイトルは、昔教育テレビの番組で放送されていた「ひとりでできるもん!」から思いついたものです。
小さな子供がひとりでできるもん!と、大人の助けはいらないと言わんばかりに、いろんなことにチャレンジする番組です。
僕達、大人は大抵のことはできるようになって、子供の頃のように何か新しいチャレンジをする機会は少なくなるのが普通です。
また、「出来ない」ということを恐れて、自分の範疇外の行動をとらないようにしてしまいがちです。
当時の僕はそれで良いのか?と自分自身のことを振り返りながら考えました。
子供の頃の純粋な、何も恐れることなく何かに挑戦できる、という気持ちを忘れないようにしたいというのが、この作品の制作コンセプトです。
もう30歳を越えてしまって、いつ「おっさん」と呼ばれてもおかしくない年頃ですが、いつまでも子供の頃の新鮮な気持ちを忘れないようにしたいなあと思う今日このごろです。