【Final】Piano Forte Ⅸはステンレス削り出しの変態過ぎるイヤホンです

Final audio design Piano Forte Ⅸ

「Final audio design」の「Piano Forte Ⅸ」というイヤホンについて書いていきたいと思います。
約1年半くらい前に購入して愛用しています。

このイヤホンはいろいろとすごいイヤホンです。
何がすごいって、まず販売価格が高いです。
定価は10万円です。
製造の手間を考えると、そのくらいの価格は仕方ない部分があるとは言え、かなりぶっ飛んでいます。

音質も価格に見合うだけの性能を持っていますが、いろんな意味で特殊で、かなり人を選ぶイヤホンだと思います。

個人的にはすごく気に入っていて、特に夏の暑い日などヘッドホンがつらい時期に家で音楽を聴くときに使用しています。
「Piano Forte Ⅸ」本当にいろんな意味ですごいイヤホンです、
でも、手に入れて良かったイヤホンの1つです。

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「Final audio design Piano Forte Ⅸ」のレビュー

「Final audio design」のイヤホン

「Final audio design(ファイナルオーディオデザイン)」のイヤホンの製品はどれもが一癖も二癖もあるものばかりです。

ハウジングが金属で作られているかつ、非常に手間のかかる製法の製品が、特に有名ですね。
無垢の真鍮やステンレスやクロム銅などを削り出して作られているものが多いです。

そして、そのイヤホンから出てくる音もかなり独自性のある音です。
Final audio designのほとんど全てのイヤホンに共通した特徴として言うことができるのは「立体感」です。
一聴するだけで、「ここのイヤホンだな」と分かるくらいに特徴的です。
Final audio design Piano Forte Ⅸ

僕には、詳しい理屈は全くわかりませんが、空気の流れを制御する「BAM」という機構が使われているイヤホンが多く、それがその独特な出音に影響を与えているのだと思います。
ホーンスピーカーの理論を応用した造りとなっているのだそうです。

なので、ハマる人はハマる雰囲気の鳴り方のイヤホンですよね。

僕もFinal audio designのイヤホンが好きな1人でして、気づいてみると今ではこのメーカーのイヤホンは6個も持っています。
非常に高額な製品も多いので、あまり高い物は買えないのですけどね。

「Piano Forte Ⅸ(ピアノフォルテ9)」は定価が10万円もするので、買うのに勇気が必要でした。
ただ、僕が購入したのはアウトレット品で、少し安く手に入れることが出来ました。

ちなみに、このメーカーの一番高級なイヤホンとなると定価20万円を越えてしまうので、気軽には手を出せないですね。

「Piano Forte Ⅸ」は色んな意味で特殊で、すごいイヤホン

「Piano Forte Ⅸ」はFinal audio designのイヤホンの中でも特に特殊な部類に入ります。
Final audio design Piano Forte Ⅸ

ステンレスの削り出し

このイヤホンは無垢のステンレスを素材として使っています。

「Piano Forte Ⅸ」には他に、真鍮を素材として使っている「Piano Forte Ⅷ」と、クロム銅を素材として使っている「Piano Forte Ⅹ」があります。
この3兄弟は使われている素材が違うだけなのだそうです。

しかし、素材の違いだけで、音にもかなりの違いがあって、所有している「Ⅸ」はもちろんのこと他の2つも試聴したことがありますが、かなり違いがあったということを覚えています。

この3種のイヤホンは金属の塊を旋盤などの工作機械を使って「削り出し」をして作っているそうです。
僕は大学時代に金属工芸を専攻していて、旋盤加工も好きでよくやっていたので、この形状の筐体を作成するのがすごく大変だと言うことがよく分かります。
旋盤加工でこのような複雑な形状に、正確に削るのはかなり困難なことです。

余談ですが、真鍮はそれほど難しい素材ではないですが、ステンレスや銅は切削加工するのが非常に困難な金属素材だったりします。
これらは「難切削材」です。
特に(クロム)銅は切削加工に関して言うと、すごく難しい金属素材です。
「バイト」と呼ばれる金属を削るための「刃」や、旋盤の「回転数」も素材によって変えなくてはならないために、高度な技術と経験が必要な工程が必要です。

まさに職人技の結晶とも言うようなイヤホンです。

したがって、製造工程の大変さを考えると、10万円とかの定価はそれほどおかしな値段というわけではないと、個人的には感じます。

と言うか、今気づいたのですが、「Piano Forte Ⅸ」の表面が鏡面すぎて、写真に自分が写ってしまっていて、ちょっと恥ずかしいです。
Final audio design Piano Forte Ⅸ

耳に置くような特殊な装着

「Piano Forte Ⅸ」を始めとする、Final audio designの製品のいくつかはなるべくゴム系の素材を使用しないように作る、ということが意識されているそうです。

最近のイヤホンは「カナル型のイヤホン」が主流です。
「Piano Forte Ⅸ」は一見すると、普通のカナル型イヤホンのようにも見えるかと思います。
しかし、Piano Forteシリーズは全て、ゴム製のイヤーピースを使用しない設計となっています。
メーカーのホームページの商品説明文には、シリコンゴム製のイヤーピースを使用すると音質を損ねることになってしまうと書いてあります。

故に、このシリーズのイヤホンは、俗に言う開放型のイヤホンと同じく、遮音性は全くと言ってよいほどありません。
音漏れも普通にあります。
使用するときの感覚は開放型のイヤホンそのものですね。

「Piano Forte Ⅸ」はイヤーピースは装着せずに、カナル型イヤホンのように先端を耳に突っ込むように装着します。(イヤーピースはそもそも装着できない)
耳の穴にピッタリと密着させるわけではなく、「耳のくぼみに置く」ような感じで装着します。

そのために、密閉感が少なく、広がり感のある音を楽しむ事ができるようです。

この装着方法は、一見するとすぐに落ちてしまいそうな雰囲気にも見えます。
しかし、意外と装着の安定感は(僕に耳には)良好です。
Final audio design Piano Forte Ⅸ

(個人的には)外では使用したくない

「Piano Forte Ⅸ」はイヤホンなのでポータブルプレーヤーなどに接続して、屋外でも楽しむことができます。
しかし、個人的にはこのイヤホンを屋外で使用するのには抵抗があります。

その理由は2つあります。

その1つは前述したように遮音性と音漏れ防止性能が、オープンタイプのイヤホン並だからです。
電車などで、音漏れしていると周りに迷惑がかかるし、外の雑音が入り込むと音楽に没頭できないからです。

2つ目は不意の事故が怖いからです。
「Piano Forte Ⅸ」の耳に置くような装着方法は、家で椅子に座ってじっとしている分には問題ありません。
しかし、外で歩きまわったり、立ったり座ったりして、コードがどこかに引っかかったりすると、耳から落ちてしまうでしょう。
非常に高額なイヤホンなので、精神衛生上よくありません。

この2つの理由から、僕はこのイヤホンは家で使うようにしています。

外で使用するならば、SHUREとかのイヤホンの方が優秀で、構造的にも便利に使うことができるように、よく考えられていると思います。

このイヤホンは、夜の静かな時に家で一人で、のんびりと楽しむのが向いているのではないでしょうか。
Final audio design Piano Forte Ⅸ

暑い時にヘッドホンの代わりに

「Piano Forte Ⅸ」を買おうと思ったのは、夏の暑い日でも、高音質で音楽を楽しみたいと思ったからです。

僕は、家では一人で音楽鑑賞をするときには、基本的にヘッドホンを使っています。
しかし、夏の暑い日は別です。
あんまりにも暑いと汗をかいてしまって、非常に不快だからです。
せっかくの高音質なヘッドホンだとしても、耳とイヤーパッドの間が蒸れ蒸れでは、集中できません。

その点、「Piano Forte Ⅸ」はイヤホンなので、暑い日でも全く問題ありません。
むしろ、ステンレスのハウジングがひんやりして気持ち良いです。
逆に冬は冷たくてびっくりしてしまうこともあります。

それに、このイヤホンは下手なヘッドホンよりも高音質だと感じています。

だけど、「Piano Forte Ⅸ」はイヤホンであることには変わりありません。
音質的には上でも、ヘッドホンと比べると、このキノコのような形状のイヤホンは、やはりイヤホンの音だと思います。

よくこのPiano Forteシリーズのレビューを読んでいると「スピーカーのような音」という文章を見かけることがあります。
まあ、それはわからないことはないですが、言い過ぎだと思います。

と言っても、定価が10万円もするイヤホンなので、流石に音質は良いです。
イヤホンとヘッドホンとスピーカーは音質も用途も、全くの別物なので比べるのはナンセンスですが、「Piano Forte Ⅸ」はそれとは関係なく良い音だと思います。

したがって、夏になるとヘッドホンは全て物置にしまって、家ではこのイヤホンをメインで使うようになりました。
Final audio design Piano Forte Ⅸ

音質

このイヤホンの音はFinal audio designのイヤホンの例に漏れず、非常に立体的な音です。

ただし、「Piano Forte Ⅸ」はどちらかと言うと、性質的にも開放型のイヤホンです。
故に、立体感と広がり感を兼ね備えた音であると言うことができます。

高音が出るとか低音が強いとか、いろいろと細かい事を言っていくと、いろいろあるとは思います。
でも、このイヤホンの「音」で最も特徴的で、語るべきなのは「空間性」だと思います。

いつもこのイヤホンの音を聴いて思うのは、一つ一つの音と音の距離がすごくリアルに感じられるということです。
音楽の中で、それぞれの楽器の強弱がはっきりしていて、豊かである、とでも言えばよいのでしょうか。
メインとなる楽器は手前に、サブとなる楽器は奥に、きちんと描き分けられている印象です。

楽曲の抑揚をしっかりと表現することができるイヤホンは少ないです。

それに加えて、このイヤホンはカナル型イヤホンでは絶対に表現することができない「広がり感」があります。
同社のカナル型のイヤホンの音の傾向と共通する音ですが、もっと開放感があります。

でも、アップルの付属イヤホンのような形状の、普通のインナーイヤー型のイヤホンとはまた違う感じの印象の広がり方です。
もっと言うと、オーバーイヤータイプの開放型ヘッドホンとも違う感じです。

なんというか、広い空間が存在しつつも、思ったよりもはっきりしたかんじの鳴り方をします。
(良い意味で)こじんまりとしていると言い換えても良いかもしれません。

矛盾しているようですが、開放型の広がり感の中に、ちょっとだけカナル型イヤホンのような、音を分析的に表現するような感覚も感じられます。
この音の感じは、本当にこのイヤホンだけの独特な感じです。
これはもしかしたら、カナル型のイヤホンのように先端を少し耳に突っ込むような装着が関係しているのかもしれませんね。

その出音の感想があるために、「Piano Forte Ⅸ」の音は、確かにスピーカー的ではありますが、その音空間はイヤホンのものだと思います。
空間性が豊かではありますが、例えば開放型のヘッドホンなどとも違うタイプの鳴り方をします。

その立体的な音空間ゆえに、あまり細かいことは気になりにくいのが良い所でもあり悪いところでもあります。

個人的には、聴いていて飽きないイヤホンだと思います。

けれども、人によってはこもったような音に感じる人もいるかもしれません。
このイヤホンはあまり、解像度を重視したような音ではありません。
なので、昨今の高級イヤホンのメジャーな路線からは逸脱しています。

それに、高音や低音が派手とか、そういうことはありません。
だから、お店でちょっと試聴しただけでは、良い印象を持ちにくいかもしれません。

装着の特殊さもあるので、ぜひ試聴と同時に試着もしたほうが良いです。(イヤーピースを交換したりできないので、完全に耳に合わない人も居るはず)

自宅などの、静かで落ち着ける環境で、じっくりと聴いて初めて良さが分かるイヤホンだと思います。
個人的には、非常に気に入っているわけですが、人には勧めにくいです。

音質のレベルは高いけれども、色んな意味でハードルも高いイヤホンだと思います。
Final audio design Piano Forte Ⅸ

アンプはあったほうが良い

他人に勧めにくい理由はもう一つあって、音が意外と環境に左右されやすいという点です。

このイヤホンは、ヘッドホンアンプがあったほうが魅力を引き出せるイヤホンだと思っています。

iPhoneやiPodなどのポータブルプレーヤーのイヤホンジャックにそのまま挿しただけだと、不安定な感じの印象の音になってしまいます。
直挿しでも「Piano Forte Ⅸ」の独特の音の広がり感や、響きの良さは感じることができると思います。

しかし、ふわふわした感じがあって、僕はあまり好きではありません。
立体的な印象も弱くなります。
明らかに制動できていない感じの不安定な音になってしまいます。

解像度を楽しむイヤホンではないと書きましたが、それなりの環境がないとちょっとボワボワ感が出てきてしまって、魅力が半減してしまう気がします。

したがって、ヘッドホンアンプなどを使用したほうが、安定感があって安心感が感じられる音になるかと思います。

それに、アンプもある程度パワーのあるヘッドホンアンプを選んだほうが幸せになれると思います。
とは言っても、イヤホンなので据え置きのアンプではなくて、ポータブルヘッドホンアンプでも十分です。

音量が取れないとかそういうことではなく、音量はどちらかと言うと取りやすい部類のイヤホンです。
音量自体はiPhoneで言うとボリュームの3〜4割くらいで十分です。
でも、それなりの制動力と言うかなんと言うかが必要な印象なんです。

故に、パワーが強い据え置きのヘッドホンアンプまでは必要ありませんが、「Piano Forte Ⅸ」にはある程度の環境が必要だと感じています。
ヘッドホンアンプを通すことで、音空間がより豊かに安定して感じられるようになるはずです。

そんな意味でも、人にはおすすめしにくいイヤホンですよね。
音が好みに合っていて、外で使いにくいとか装着が特殊な点を克服できるのならば、非常に高音質で良いイヤホンだと思います。
Final audio design Piano Forte Ⅸ

まとめ

色んな意味で特殊なイヤホンである「Piano Forte Ⅸ」は、誰にでも勧める事ができるようなオーディオ製品ではないです。
しかし、このマニアックな路線のイヤホンは、自分の中では気に入って愛用しています。

金属の削り出しのキノコのような形状の筐体という見た目のおもしろさだけでなく、音質的な面でもハマってしまえば非常に魅力的なイヤホンです。

しかし、音質が環境に左右されやすいことや、静かな環境でないと良さがわかりにくいと言う特性から、理解されにくい部分もあるのではないかと思います。
一度の試聴だけでは欲しいとは思わないかもしれません。

実はこのイヤホンを手に入れる前に、何度かこのPiano Forteの3兄弟を試聴をしたことはあったのですが、その時はあまり良い印象はありませんでした。
遮音性の低いイヤホンの試聴は、周りがうるさいとダメですね。

他の2機種は所有していないので、あまり詳しい音質の差は書きませんが、それぞれ特徴的な音の違いがありました。
その時は、「使われている金属が違うだけでこんなに音が違うんだ、へぇ…」くらいにしか思いませんでした。

そんな感じだったのに、なぜこのイヤホンを買ったのかと言うと、完全に「勢い」な部分があります。
もともとFinal audio designのイヤホンは好きで、気になっていた製品だったということもあります。
なんだか欲しくなってしまったというやつです。

でも、気に入って使っているので結果的には正解でした。
実際に使い始めてから良さがわかってきたという、なんとも言えない順番で好きになったオーディオ製品です。

そんなわけで、「Piano Forte Ⅸ」は静かな場所で落ち着いて使うには良いイヤホンである言えます。
我が家で、スピーカーが使えなくて、暑い日などにヘッドホンを着けたくないけれども、高音質で音楽を楽しみたいときには重宝しているイヤホンです。

2015年8月追記:どうやら最近になって、『Final audio design』は『Final』というブランド名に変更になったようです。

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コメント

  1. お幸 より:

    とても参考になる記事ありがとうございます。
    同じく、蒸れるのが嫌なので持っているヘッドホンはほとんど開放型です。
    イヤホンも耳の中が痒くなるので敬遠していましたが、
    これなら夏場でも良い音で聞けそうです。
    10万円出すか微妙ですけどw

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