【100円のコーラを1000円で売る方法】モノの価値を高めるためには

100円のコーラを1000円で売る方法

”100円のコーラを1000円で売る方法”という本を読みました。
この本はコーラを通常よりも高額な値段で売るという印象深いタイトルなのですが、実はコーラの話は10個ある章の内の1つでしか語られていません。
しかし、本書の主題はまさに”100円のコーラを1000円で売る方法”です。

それは簡単に言うと商品の価値を高めてそれに見合った価格であると顧客に納得してもらうことで成立するという内容です。
マーケティングはお客さんの言いなりになるだけでは上手くいきません。
商品を提供する側が「価値」を作り出していく必要があるということです。

前々から思っていることなのですがアートとビジネスはよく似ている部分があるように思います。

「100円のコーラを1000円で売る方法」の内容を全部紹介することは出来ないですが、僕なりに解釈して、アートと絡めて考えた文章を書いていきたいと思います。

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”100円のコーラを1000円で売る方法”をアートと絡めて考えてみる

マーケティングがわかる10の物語

「100円のコーラを1000円で売る方法」では主人公の「宮前久美」という人物の目線で描かれた物語から「マーケティング」の重要なことが説明されています。

物語は、とある会計ソフトを販売している会社の地方の営業所のセールスだった宮前久美が本社の商品企画部に転勤してくるところから始まります。
宮前久美は年齢は30歳前後で、長身で目力の強い勝ち気な性格の女性です。
10年間セールス一筋で、少々強引な方法で、大口の契約を何件も取り付けたという武勇伝がたくさんあるという人物です。

そんな彼女にも未熟な部分があって、物語の中で何回も的はずれな行動をしてしまいます。
商品を売り込みに行ったらライバル社に契約を奪われてしまったり、「これじゃ売れない」と言われてしまうような企画をミーティングで提出してしまったりしまいます。

そんな時に宮前久美にアドバイスというか駄目出しをするのが「与田」という商品企画部で彼女の面倒を見るという役割の40代前半の男性です。
彼女の発言に「浅い」とか「わかってない」とバッサリ切り捨てるようにアドバイスをする与田はマーケティングについて深い知識と経験を持っていて、実質商品企画部を仕切っている人物として描かれています。

物語の流れは、宮前が反面教師的な悪いお手本のような行動をして、与田が解決のためのヒントを与えて、宮前が自分で理解するきっかけを掴み問題を解決していくというのが主な内容です。

物語形式の説明なので、ビジネスのことに詳しくない僕のような人間にも取っ付き易くわかりやすい内容だったと思います。

マーケティングとは

僕はマーケティングのことは何も知らない素人なので、まずマーケティングとは何なのか調べてみることにしました。
Wikipediaの「マーケティング」の項目には以下のように書いてあります。

マーケティングとは、企業や非営利組織が行うあらゆる活動のうち、「顧客が真に求める商品やサービスを作り、その情報を届け、顧客がその商品を効果的に得られるようにする活動」の全てを表す概念である。

マーケティングとは顧客に「価値」を提供するための全ての活動のことを指します。

例えば、あるギャラリーの展覧会で一枚の風景画を買うとします。
たくさんの絵が展示されている中でなぜその一枚を選んだのでしょうか。

  • 絵の雰囲気が気に入った
  • 描かれている風景に思い入れがある
  • 風景画が好き
  • 家に飾るのにちょうどよかった
  • 画家のネームバリュー

このような様々な要因が考えられます。
つまり、その絵を選んでお金を払う理由はその金額に見合った価値を見出したからです。
画家がその顧客に対して作品を購入することによって得られる何かを展覧会を通してアピールした結果です。

それが、「価値の提供」です。
価値の提供を効率よく行うための活動全般がマーケティングです。
商品の企画、宣伝、セールス、陳列、販売など全てがマーケティングの一部であると言えます。

アートも何らかの価値を観客に提供して初めて成り立つものだと思います。
また、作品の価値を伝えるための活動すべてがマーケティングであると言えます。

安易な値引きは良くない

商品が売れないという時に選択できる企業戦略として商品の「値引き」が考えられます。
しかし、値引きをすることは短期的には利益を獲得できるかもしれないですが、長期的に見ると自社の首を締める結果になりかねません。

本書の物語で、宮前は何度か値引きをして問題を解決しようとしますが、その度に失敗したり、与田に「本当にわかってない」と言われたりしています。

商品を値下げするということはそれだけコストもおさえなくてはならないということです。
宮前の会社は会計ソフトの業界でのシェアは第3位です。
しかし、ソフトウェアを売るためのコストで一番比重が大きいのは「開発費」なのだそうです。
つまり、多くのソフトを販売できる業界の1位の会社「マーケットリーダー」の方がコストが安く済むので、宮前の会社のような「マーケットチャレンジャー」の立場の会社には「値引き」という戦略では勝ち目がありません。

低コストで商品を提供するためには市場での高いシェアや、商品を製造するための部品や材料を他社よりも有利に獲得できることが条件です。
その条件の揃っていない企業が「値引き」という手法をとってしまうと、低収益に苦しむことになってしまうのです。
「マーケットチャレンジャー」の企業が利益を出し続けるためにはもっと別の方法が必要となってきます。

アートの値段

アートの場合でも作品の値段を下げれば売れるというものではありません。

アートと企業の作る商品で大きく違うのが、作品の生産コストにあたるものはアーティストの時間であるという点です。
個人で活動しているアーティストは有限な時間というものを消費して作品を生み出しているはずです。

また、集団で大規模な作品制作をするという、企業の「商品の製造」に近いアート制作の形態も存在します。
巨大なアート作品を集団で作る場合は人件費や材料費も相当な金額になってしまいます。
大規模な作品になればなるほど雪だるまのようにコストが大きくなるということですね。

かかった費用を回収できなければ、制作活動を続けることが困難になってしまいます。
アートというのは続けるためにとにかくお金と時間が必要なものです。

どちらにしても、作品の金額を無理に下げることはアーティスト自身が苦しい思いをすることになるでしょう。
時間もお金も有限なものです。
生活することだけで精一杯だと、作品を制作する時間すら捻出できなくなってしまうこともあります。
作品を通して「価値」というものををいかにして提供するかということが重要となってきます。

顧客の言いなりになっているだけではダメ

日本人は世界でも有数の勤勉で真面目な民族です。
戦後の高度経済成長の時期を経て、世界でも最高クラスの製品を生み出すことのできる技術力と生産力を生み出すことに成功しました。
しかし、顧客の期待に答えようと真面目に一生懸命対応し続けて、高品質な商品を作って販売しているにも関わらず儲からない、という悪循環を生み出すことになっているケースが多いそうです。
顧客の言いなりになってマーケティングを行ってきた結果なのかもしれません。

本書で宮前がある会社に商品のセールスに行くシーンがあります。
その時宮前は顧客の要望を100%叶えた条件で契約を成立させようと考えます。
しかし、結果的には同じ日にセールスに来ていたライバル社に契約を持っていかれてしまいます。
ライバル社が提示した金額は顧客の予算をオーバーしたものであったりと、顧客の要望に全く答えていないものでした。
それにもかかわらず、ライバル社のセールスが契約をとりつけることが出来たのは「新しい価値」を提案することが出来たからです。
そもそも、その会社の要望書には的はずれなものが含まれていました。
そこで「会計システムのあるべき姿」というものを提案することで、その会社の担当を納得させて契約にこぎつけたのでした。
宮前は顧客の予想の範囲内の価値しかアピールすることが出来なかったからこのような結果になってしまったということです。

企業もアート制作も、顧客の期待以上の価値のあるモノを作る努力が必要です。
顧客の要望を100%叶えただけの商品を作ったとしても、それは逆に言うと新しい価値を提供する機会の損失をしていると言えます。

顧客が考えているよりも、さらに上の素晴らしい価値を提供することこそが売れる商品を作る条件なのです。

新しい価値を見つけるには

「新しい価値を提供する」と一言で言うことは出来ますが、それは簡単ではありません。
そのためにはまずライバルとなる企業の製品と戦略をリサーチすることが必要です。

物語の中で最初、主人公の宮前は会計ソフトの業界で競合するライバル社のことを特にリサーチせずに商品の企画を考えて、与田に「話になりません」と言われてしまいます。
ちなみにライバル社は、会計ソフトの業界では最大手の企業として描かれています。

そこで、宮前は与田のアドバイスにしたがってライバル社にはできなくて自社にはできる何かを模索しようとしました。
自社だけが提供できて、さらに顧客の求めている価値が合わさった部分のことを「バリュープロポジション」と言います。

バリュープロポジションとは非常に合理的に消費者に商品の価値を認めてもらう考え方だと思います。
自社にしか出来ないことと顧客の求めることを明確に意識して企業戦略を考えることが売れる商品を作るための第一歩です。

作品のオリジナリティ

アート作品においてバリュープロポジションとは、「オリジナリティ」というものに近いかもしれません。
そのアーティスト独自の、他のアーティストに真似することができない表現方法は武器になります。

ここで勘違いしては困るのがオリジナリティさえあれば売れる作品が作れるということではありません。
アート市場の顧客の求める価値とアーティストのオリジナリティが合致して初めて意味のある作品が誕生するのだと思います。

これを「アートの文脈」なんて言い方をすることがありますが、文脈に沿った表現を模索することは非常に重要なことです。

オリジナリティのある作品を作ることはそこまで難しいことではありません。
しかし、観てくれる人の求めるものと独自性を同時に表現することはなかなかできることではないでしょう。
だからアートを売ることは難しいと言われてしまうのだと思います。

Appleのすごさ

独自性とバリュープロポジションが明確な商品を作っている企業として挙げられるのが「Apple社」です。

Apple社の製品はいまさら説明する必要も無いほど特徴的でシンプルですよね。
iPhone、iPod、iPad、Macなどの数々の製品が世界中で売れ続けています。

Apple社の製品のすごいところは製品の機能とデザインにある程度の割り切りがあるところです。
コンセプトに対して徹底していると言い換えても良いかもしれません。

例えば、iPhoneと他のスマホの違いです。

アンドロイドなどのOSが搭載されているスマホはiPhoneよりもはるかに多くのアプリがあって、iPhoneよりもさらにいろんなことが出来ます。
画面のデザインを自由にカスタマイズしたりすることはiPhoneでは通常は出来ませんよね。
しかし、多くのことができる反面、ウイルスに感染する心配があったり、動きがサクサクでなかったりします。

それに対してiPhoneは機能的にはアンドロイドのスマホほど多機能ではありません。
と言っても一般の人が使う分には不自由することはないのですけどね。
iPhoneはAppleの承認を受けたアプリしかダウンロード出来ない代わりに、ウイルスが入り込む心配は一切しなくても大丈夫です。
動きもスムーズで使いやすく、使い方も説明書が要らないくらいシンプルでわかりやすいです。
そして見た目もすごくかっこいいです。

悪く言うわけではないですが、日本の企業の電化製品にはこのような割り切ったシンプルな製品が少ないように思います。
とにかく多機能で、顧客の要望を全部叶えただけのような製品が多く、「100円のコーラを1000円で売る方法」からはかけ離れているように感じます。

コンセプトの一貫性と人々が求める価値が一致しているApple社の製品は多くの人が魅力的に感じるのだと思います。

まとめ

「100円のコーラを1000円で売る方法」では、どのようにして価値の提供をするべきかというマーケティングの重要なポイントがわかりやすくまとめられています。
ストーリー仕立てで、宮前久美という個性的なキャラクターを通してマーケティングを学ぶことができるので、楽しく読むことが出来ました。
内容的にはマーケティングという言葉すらよくわかっていない素人の僕でさえ共感できる、興味深い内容でした。

本書を読み進めていくとアートとマーケティングは似ている部分があることに気付かされます。

マーケティングとはある特定の商品を売るための方法ではなく、求められている価値をいかにして顧客に提供するかということです。

アートもまたアーティストが観客に新しい価値を提案する手段の一つです。
アート市場の顧客に価値を提供することが出来なくては、アートとして成立しません。
作品を何らかの形でお金に変えることが出来なくては制作活動を続けていくことは難しいでしょう。
アーティストは、今後どのようにして観客の求めるオリジナリティを生み出していくか考えることが重要だと思います。

長文になってしまいましたが、本書のまとめとそれにアートを絡めた話は以上です。

ところで、肝心の「100円のコーラを1000円で売る方法」ですが、ここでは書きません。
具体的な方法は本に載っているのですが、ここでは「モノの価値を高めた結果」とだけ書いておきます。

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