個人の体質と言うのはそれぞれで違うのは当然のことです。
でも、他人の体の中身のことなんて、親しい間柄同士の人間であったとしても分かるはずがありませんよね。
アートというのは「ひと目見ただけだとわかりにくい情報」というのを視覚化することだったりすると思うのです。
実は、僕には食べることができない食べ物がいくつかあります。
その1つは「リンゴ」です。
リンゴを食べると口の中が腫れてしまって、非常に不快な思いをします。
それに、ものすごく気持ち悪くなって、しばらく寝込んでしまうこともあります。
いわゆる食物アレルギーというやつです。
子供の頃はリンゴを食べてもそう言った症状が出ることはなく、むしろリンゴは好きでよく食べていました。
いつの頃からかリンゴを食べることができない体質になってしまったのです。
しかし、食物アレルギーなどで食べられないものがあるという事実は、何でも食べることが出来る人の視点からすると理解し難いものです。
そこで、アレルギーを持っている人から見た、「食べられない食べ物」を誰でもわかりやすいように「視覚化」してみました。
アート作品「食べられないリンゴ」の制作
食べられない食べ物
そう、僕はアレルギーのせいで食べることができない食べ物がいくつかあるんです。
そこまで重症ではないのですけどね。
それでも、「食べられない食べ物」を食べてしまうと、体調が悪くなったり、口内が腫れてしまったりします。
リンゴの他にもフルーツだと、イチゴとか梨とか食べることができません。
小さいころ、リンゴとか梨とかイチゴが大好きで、食べ過ぎてしまったせいかもしれません。
僕の場合、ちょっと普通と違うのが、火を通すと食べることができるようになるという点です。
生でそのままは食べられないけど、ジャムなら全く問題なく食べることができます。
ちゃんと病院で調べたことがないので、もしかしたらアレルギーではないかもしれないですね。
でもまあ、とにかく僕には、これらのフルーツは生では食べることはできないのです。
アレルギーが無い人には理解不能な部分がある
近年では、「アレルギー」というものが認知されてきて、小学校とかでも子供たちに無理にいろんなものを食べさせたりとか、そういうことはなくなりつつありそうです。
僕も、幼稚園の頃、給食を食べられなくて昼休みとかに居残りさせられて、無理やり食べさせられた記憶があります。
そのせいで、(まずい)イカリングがトラウマで、今でもイカとかエビとか食べたくありません。
最近では、アレルギーがある人も増えていますから、そう言う風習がなくなるのは良いことだと思います。
ちなみに、うちの奥さんは甲殻類のアレルギーで、夫婦で食べ物の趣味が合っているので、運が良かったです。
しかし、普通はおいしいはずの「リンゴ」とかが体質的に食べることができないと言う事実は、普通に食べることができる人からすると理解し難い、というのが現状です。
いや、「食べられない」という事実は、理屈ではほとんどの人は理解しています。
しかし、感覚的には共感してもらうことは非常に困難です。
中には、あからさまに嫌な顔をしたりする人もいます。
言葉では「仕方ないなあ・・」と言っていても、心の中では「オレのリンゴが食えないのか!」と言っているようにしか思えないような態度をとられてしまった経験があります。
(その場で食べるしかないような感じの)食べられないものをいただいてしまった時には、いつも事情を説明しつつ、失礼だと思いつつも丁重に断るようにしていますが、色んな意味でなかなか難しいです。
嫌いなだけなら、演技をしながら食べれば良いですが、アレルギーがある食べ物だけはその人にとっては「毒」ですから、どうしても食べることはできないのです。
すごく申し訳無さそうにしてくれる人がほとんどですが、ごくたまに本気で機嫌が悪くなってしまう人もいます。
僕自身も申し訳ない気持ちで一杯ですが、そんなに怒らなくても・・・と思うことがあります。
でも、わかってもらえないのは仕方ないことなのです。
僕も、食べることはできないけどリンゴは大好き(だった)なので、感覚的に解せないのは当たり前です。
アレルギーを視覚化する
理解し難い事柄を、理解しやすいようにするには「視覚化」する事が、最も手っ取り早いです。
人間は、細かく文章を読むよりも、ビジュアル的な情報の方が理解し易いものです。
まあ、それがアート表現の目的でもあります。
ひと目見ただけで印象が伝わって来るのが、アートの良い所です。
アレルギーのある人から見たら、食べられない食べ物は、やはりすごく危険な存在として目に映ります。
それを誰にでも理解できるようにするためには「誰が見ても食べられないように見える食べ物」を作る必要があります。
そこで、「美味しそうに見えつつも、痛そうなビジュアルのリンゴ」を表現した作品を作ってみようと思いました。
美しさと危険さを両立したような表現ができればベストです。
トゲトゲ
「食べられないリンゴ」を制作するために使用する材料は、「リンゴ」と「画鋲」、「プッシュピン」です。
書類などをコルクボードなどに貼り付ける、あれです。
だれも、こんなものを口には入れたくないはずです。
これらを、用意した赤いリンゴと、青リンゴにホットボンドを使って貼り付けていきます。
「画鋲バージョン」と、「プッシュピンバージョン」の2種類を作ります。
2色のリンゴの全体にくまなく接着することで、最終的にはトゲトゲのリンゴが出来上がるはずです。
画鋲
まずは画鋲バージョンを作っていきます。
作ると言っても、ホッドボンドを使って画鋲をリンゴに貼り付けるだけの簡単なお仕事です。
どんどん貼り付けていきます。
かなりトゲトゲになってきました。
赤いリンゴの方は、全体に画鋲を貼り終わりました。
青リンゴにも画鋲を張り付けていきます。
ホットボンドの接着のせいで、納豆の糸のようなものがでてしまっているのは、最後にまとめて掃除をします。
画鋲を全体に貼り終わったら、次は透明プッシュピンです。
透明プッシュピン
透明なプッシュピンを青リンゴに接着していきます。
画鋲よりも高さがあるので、貼り付ける数も多くて、かなりのボリューム感がでそうです。
青リンゴは完成です。
続いて、赤いリンゴも全体にプッシュピンをくっつけていきます。
全体にびっしりと接着して、掃除をしたら、「食べられないリンゴ」の完成です。
「食べられないリンゴ」
完成です。
かなり痛そう・・・と言うか本気で痛くて素手で持つことはできません。
「食べられないリンゴ」を手で持ち上げる時は、革手袋を装着したほうが良いです。
かなりの美しさもありますが、危険な匂いがする物体となりました。
なんとなく、ウイルスっぽい印象もあるかもしれません。
持ってみると実際に痛いし、下手に素手で持ったりしたら血が出ます。
画鋲をくっつけたリンゴです。
金色にキラキラトゲトゲしていて、ものすごく攻撃力が高そうに見えます。
床面の反射が綺麗です。
ギラギラした感じが、デンジャラス感を高めているように思います。
透明プッシュピンを接着したリンゴです。
プッシュピンが縦長だったので、元のリンゴよりもサイズが一回り大きくなってしまいました。
透明感とトゲトゲ感が両方ある作品となりました。
一見するだけだと、この中にプッシュピンに覆われたリンゴがあるとは思えないかもしれません。
なかなか、おもしろい表現ができたと思います。
この見た目なら、誰もこの物体を食べ物だとは思わないでしょう。
まとめ
「食べられないリンゴ」はアレルギーがあって食べられない食べ物が、食べられない人からはどのように見えているのかということを視覚化した作品です。
結局のところ、人間は理屈でわかっている事柄も、実体験がないと共感をすることはできません。
でもそれは無理のないことなのです。
「食べられないリンゴ」は食物アレルギーが無い人でも、ひと目でやばいものだと分かるように、アレルギーを立体作品として表現したものです。
最近では、様々なアレルギーを持つ人が増えてきています。
そんな、現代人全体の体質的な変化もあって、そう言う不自由がある人間への理解も高まりつつあります。
僕は症状も軽くて、火を通せば食べることができるので良いのですが、うちの奥さんのように食べてしまうとやばい症状が出る人も世の中には存在しています。
以前に実体験として、ちょっと嫌な思いをしたことがあって、世の中にはそういうことを全くわかっていない人もいるのです。
それが、この作品を制作することにした動機です。