いつも作品のアイデアを考える時に悩む問題があります。
コンセプトを重視した作品を作るべきか、ビジュアルを重視した作品を作るべきかということです。
「アート」というのは、その作家によって制作や作品のスタイルが異なるのが普通です。
アーティストというのは自分の持っている世界観を表現するものです。
しかし、実際に作品を作っていく中で、ついつい思ってしまうのは「本当にそれで良いのか?」ということです。
作品を作っていく以上は、自分の表現したいテーマを効率良く相手に伝えることが、ものすごく重要です。
最も効率良く相手に作品のコンセプトを相手に伝えるためには、どの程度作品のビジュアルに気を使うべきなのでしょうか?
個人的にはアートにはコンセプトもビジュアルも両方必要で、この二つのバランスがちょうど良いということが作品の完成度を左右するポイントなのだと思っています。
作品に必要な要素とは
バランスが大事
最近、作品のアイデアを考える時にちょっと悩んでいることがあります。
それは、コンセプトとビジュアルのどちらを、どのくらい重視して作品のデザインを考えるべきかということです。
もちろん「アート」というものは文章だけの論文とは違いますから、「見た目」というのは非常に重要な要素です。
ビジュアル的な魅力やおもしろさがあって、初めてアートというものが成立するのだと思います。
ただし、アート作品にとって、「コンセプト」というものも非常に重要な存在です。
なぜなら、コンセプトが無い、もしくは希薄な芸術作品というのはある意味「工芸品的」な特性が強まってしまうからです。
ただ単に、家とかに飾って「美しい」というだけではアートであるとは言い難いです。
アートというのはアーティストが置かれている状況の中で感じることのある問題点や感じたことを利用して、世の中に影響を与えることが目的であるという側面があります。
したがって、アートのコンセプトとは、他人に共感を持ってもらえるような内容かつ、社会的でなくてはなりません。
アートというのは作品のビジュアルを通して、作品を見た人にそのコンセプトを効率良く伝えるための媒体です。
故にコンセプトとビジュアルの両方がバランス良く含まれているということがアート作品を作る上で重要なのです。
コンセプトを伝えるためになぜビジュアルが必要なのか
アートと、文章だけの媒体である本や論文と、誰かに何かを伝えるためのツールであるという意味では同じ性質を持っているものです。
しかし、両者が異なるのは、情報を相手に伝えるためのアプローチの仕方です。
本や論文というのは基本的には文章で相手に情報を伝えるものです。
写真が途中に入っていることも多いですが、文章が主体となっているのが普通です。
それ故に、長い時間をかけて文字を読んでもらい、詳細に情報を相手に伝えることができる点が優れていると言えます。
その代わり、長い文章を読むためには時間がかかるし、何よりも読む人がやる気にならないと読んでもらえません。
アートというのは、文章だけの媒体に比べて、作品に内包されているコンセプトを鑑賞者に理解してもらうために時間がかかりません。
良い作品はパッと見ただけでもおもしろいと思ってもらえたり、何かを感じてもらえるはずです。
ビジュアル的におもしろさのあるアート作品は、一目見た瞬間にコンセプトを理解してもらえる可能性があります。
文章だけの媒体と違って、作品を見る人がやる気を出す必要も無いし、作品によりますが、作品を理解するために時間もかかりません。
それがアートという情報伝達ツールの優れている点です。
アートにはコンセプトもビジュアルも必要なのです。
曖昧
ただし、アートというのはビジュアルを通して鑑賞者にコンセプトを伝える、という性質であるが故に、正確に伝えたいことを伝えるということは難しいです。
作品を見た人によって解釈の幅があるのが普通です。
しかし、それがまたアートのおもしろいところではあるとは思います。
見る人によって作品の印象が異なるというのが、アートというものが飽きられない理由の一つなのだと思います。
もしも正確に、そして詳細に、とある情報を伝えたいと考えるならば、論文や本の方が向いています。
視覚情報を通した情報伝達ツールの影響力
アートというのは前述したようにビジュアルを通して誰かに情報を伝えるためのツールです。
人間とは、基本的に「印象」というものに左右されて行動を左右する生き物です。
例えば、サメに食べられて帰らぬ人となる場合よりも、ヤシの実が落ちてきて人生が終了してしまう人の方がかなり多い、という話があります。
これは「サメに食べられる」ということの方がずっと恐ろしく感じますよね。
でも、実際の危険度はヤシの木の下に無防備で突っ立っている方がずっと上なのです。
このように、人間というのは印象が強いものの方がやばいと感じてしまうものなのです。
アートというのは基本的には「印象」を相手に与えることが、コンセプトを理解してもらうことが基本的な道筋となっています。
より強烈な印象をあたえることができるビジュアルの作品を作ることができるのは、それだけでも武器となります。
そして、鮮烈な視覚的印象と、内包されているコンセプトがマッチしている作品こそが、優れている作品と言うことができると思います。
したがって、優れたコンセプトとビジュアルを持っている作品というのは、一気に多くの人に情報を拡散できる可能性があります。
芸術は爆発
「芸術は爆発だ!」という岡本太郎の有名な言葉がありますが、これはある意味で真理を捉えていると思います。
というのも、人が創りだすものの中でも、「アート」と言うのは、爆発的な影響力を社会に与えられる可能性があるものの一つだからです。
これはアートというものが、ビジュアルとコンセプトを兼ね備えていて、人間の印象に残りやすいという性質があってからこそです。
もちろん爆発的な威力を作品に持たせるためには、優れた作品を作り続けることが必須条件です。
そして、作者自身もそれだけの影響を持った人物となる必要があります。
そういう意味では、芸術というのは「爆発できる可能性がある」と言い直しても良いかもしれません。
まとめ
こんなことをじっくり考えることとなったきっかけは、最近いろいろな新しい出会いなどがあって、自分の作品制作のあり方について考えさせられたからでもあります。
人によって「表現」というものが千差万別であるのは当たり前ですが、僕自身の作品の価値観と全く違う趣向を持っている作家も多いということを実感しました。
作品制作において「何が正しいのか?」と言うのは答えが出ない問いかけです。
故に、大事になってくるのは、自分自身の考えをはっきりさせて、自分の制作の一貫性を維持することだと思います。
そこで、作品のアイデアを考える際の、自分自身の考えを整理する意味で、アートにおけるビジュアルとコンセプトの重要性についてまとめてみたのでした。
アーティストによって、作品というものは自分自身を写している鏡のようなものです。
作品の主題には必ず、その作者の「気になっている物事」という要素が内包されているからです。
視覚的な要素と、主題がバランスよく表現されていることが優れた作品の条件の一つです。
僕が作っているような作品は視覚的な部分に訴える芸術の一種です。
したがって、ビジュアル的な部分とその完成度は重要です。
見た目の完成度を上げることで、視覚情報を通して、作品に内包されている情報を効率よく伝えることが容易になると考えているからです。
コンセプトや伝えたい事柄がなくては、アートは成立しません。
しかし、そのコンセプトを伝えるためには、ビジュアルも必須なのです。
よって、結論としては、両方ともものすごく重要ということです。