今日、包丁が切れなくなってきたので包丁を研いだのですが、”研ぐ”という行為自体について考えてみました。
ちなみに包丁を研ぐときに使ったのは、大学生一年生の木工の授業のとき授業で使うために買った砥石です。
僕は大学生時代は、美術学部の工芸科 彫金研究室というところに所属していました。
一年生の時はどの研究室に行くか決まっていないので、工芸科の学生が全員で同じ授業をします。
この砥石は、一年生の木工の授業で、ノミとかカンナを研ぐために買ったものなのですが、もちろん包丁を研ぐことも出来ます。
なぜ研ぐのか
研ぐのは楽しい!
僕は、この”研ぐ”という砥石にひたすら刃物をこすりつける行為が好きです。
ずっと、同じ動作を繰り替えすことで無心になることが出来ます。
木工のカンナの刃を研ぐ時なんかはピタッとした平らな面になるように研がなくてはならないので、相当の集中力が必要となります。
大学一年生の時は、ほとんど初めての”研ぎ”でしたから、うまくいかなくて、砥石がかなり薄くなっていしましました。
カンナを研ぐときは平らに研がなくてはなりません。
砥石も常に平らに直しながら研ぐので、ずっと研いでいるとだんだん砥石がすり減って薄くなってきてしまいます。
左がほぼ新品で、右がすり減って薄くなってしまった砥石です。
なぜ、2つもあるかというと、薄くなって使いにくいので学生時代にもう一つ買ったからです。
ここまで薄くしてしまった人は同級生でもいなかったと思います。
まあ、下手ってことなんですけどね!
長時間研いでいると、指がふやけて指も一緒に削れたりして血が出てくるんですよ。
木工の授業を受けていた時は、生傷が絶えませんでした。
しっかり研いでしっかりした仕事をする
でも研ぐのは楽しいです。
うまくいかない時は、苦痛ですが、しっかりと研げた瞬間は「いい仕事したなあ」と何かをやり遂げたような気持ちになります。
「研ぎ」がうまくいっている道具で仕事をすると、きれいな仕事が素早くできるようになるので、気持ちが良いですね。
彫金の道具の話
”研ぎ”が必要な道具
僕が大学で勉強していた「彫金」の道具も”研ぎ”が必要なものがいくつかあります。
彫りに使うタガネや、キサゲという金属のバリを取ったりする道具たちです。
彫金の作業でこれらの道具を使うときはしっかり研いでから使い始めます。
そうしないと本当に仕事にならないですね。
研ぐという行為は道具のメンテナンスをする作業です。
道具を正確に研ぐことができる、という技術はその道具を使った作業をするときには必要な技術だと思います。
しっかり研ぐには集中力が必要
また、正確に研ぐにはものすごい集中力が必要となってきます。
上手に”研ぎ”ができるようになるということは”集中すること”が上手くなるとも言えるかもしれません。
”研ぎ”がうまくなって、慣れてくるとグッと集中して一瞬で研ぐことができるようになります。
失敗できない真剣勝負の前の精神統一
彫金の技法の一つに、銅板などの表面をタガネで切削して模様を表現する、”彫り”という技法があります。
これは、僕が大学2年生の時の初めての彫金の彫りの作品です。
サイズはA4サイズだったと思います。
もちろん、どこか一箇所でも間違えて、失敗したらその銅板は使えなくなります。
今、銅などの金属の値段は上がっていますから切実です。
そのような失敗の出来ない真剣な仕事の前に集中力を高めて”研ぎ”を行うということは、道具の手入れという意味意外に、その行為自体が失敗を少なくするために必要だと思います。
作業の前に砥石に向き合ってウォーミングアップする。
こうして精神統一をすることが良い仕事をするために必要にということですね。
まとめ
プロの板前さんなどは食材を切る前に必ず包丁を研ぐそうです。
もしかしたら、包丁を研ぐことでコンセントレーションを高めているのかもしれないですね。
研ぐという行為には、道具のメンテナンス以外にもそのような、精神統一の意味も含まれていると思います。
本番を始める前に、道具を手入れすると同時に気持ちも整えることが出来ます。
良い仕事をするためには、自分のメンタルの面でも落ち着いてどっしりかまえている必要があります。
”研ぎ”の必要な道具を使う作業をする時は、気持ちも一緒にメンテナンスするつもりで、愛用の道具の面倒を見てあげることが大事だと思います。